2484適正使用のための臨床時間治療学
6/14

30  第3章 時間治療の実際―生体リズムとの上手な付き合い方― POINT 食事は光と同程度の体内時計調節作用を持つ.食のタイミングや内容を考慮する「時間栄養学」は,健康科学,予防医学に役立つ.腸内細菌叢にも日内リズムが存在し,宿主の末梢時計を調節している.❶なぜ朝食は大事なのか ヒトの体内時計(概日時計)は24時間よりも少し長いといわれており,測定方法によっては平均で24.1時間であったと報告されています.つまり,この地球上で生きていくにあたり,毎日体内時計の時刻調節を行う必要があります.この時刻調節を担うのが,光,食事,運動などの外的な環境因子です.体内時計研究では,調節することを「同調」と呼び,前述の環境因子を「同調因子」と呼びます.この体内時計の同調システムをうまく使うことで,私たちは毎日遅れがちな体内時計を24時間ピッタリに微調整しているのです.そしてここで重要なのは,同調因子のタイミングです.朝の光は体内時計を早める効果をもたらし,反対に夜遅い時刻の光は体内時計を遅らせる効果を持ちます.同様に,食事も朝食は体内時計を早める効果,夜食は体内時計を遅らせる効果をもたらします.よくいわれるように朝日を浴びて,朝ごはんを食べましょうというフレーズは,体内時計としても理にかなっているわけです. 一方で,普段朝食を食べない子供は学校の成績が悪いという全国調査の結果は,何十年経っても変わらず話題に上がります.朝食は,体内時計をリセットするとともに,体温を上げ,交感神経優位な状態に体を活性化させることで,午前中のパフォーマンスアップにつながると考えられます.また,朝食を摂らない子供は,家庭環境がよくないなどの社会的な要因もあるといわれています.早寝早起き朝ごはん運動,朝日を浴びて朝ごはんを食べようといったフレーズ,大学における100円朝食サービスなどは,国民の間にたしかに浸透し,子供の朝食欠食率は平成29年度の国民健康・栄養調査では4.6%にまで低下しています.しかし,若い世代でみると朝食欠食率は23%もあり,依然高水準をキープしているのが現状です.政府の第3次食育推進基本計画ではこの数値を下げることを目標の1つに掲げています.朝食欠食は子供の成績以外にも,日々のパフォーマンスなどにも影響を与えます.よって,朝食は体内時計の調節だけでなく,さまざまな理由から重要なのです.❷時間栄養学とは このような食と体内時計の関連を調べる学問として時間栄養学があります.この本のメインテーマである時間治療学(時間薬理学)に習い,2000年代の後半頃から出てきた考え方です.2014年には,早稲田大学の柴田を代表として,朝食と成績の関係を初めて報告した女子栄養大Ⅰ時間栄養第3章 時間治療の実際―生体リズムとの上手な付き合い方―section

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る