2488実践 小児てんかんの薬物治療
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てんかんの治療は,そのてんかん症候群や発作型に最も適する薬を,発作が起こりやすい時間に最も高濃度になるように使用することであるが,それには薬物動態に基づく抗てんかん薬の用量と飲み方の調節,副作用の発見・予防が重要であり,そのために血中濃度モニターが必要である.まとめを表4-1に示し,個々に解説する. Ⅰ 薬物動態 1 薬理学的な考慮のまとめ①てんかん症候群・発作型より抗てんかん薬の候補を選んだあと,発作の好発時間に血中濃度が高くなるように,TmaxとT1/2を考慮して薬剤選択と投与方法・時間を決める.②相互作用で互いに血中濃度を下げ合う組合わせでは,その発作型に効果があると思われる薬を増やすか,効果が少ないと思われる薬を中止する.相互作用で血中濃度が上がる組合わせを利用することもある(VPAでLTG,PBを,AZMでCBZ濃度を上げるなど).③多剤併用時,発作型から不適当と思われる薬,血中濃度が著しく低い薬は中止する.同じ作用機序の薬の併用は効果が乏しいだけでなく,Na+チャネル阻害薬同士の併用でふらつきなどの副作用が起こるので,その併用は避ける.薬理学的な考慮のまとめ1 ④開始時に副作用や発作の増加が起こる薬,減量・中止時に離脱発作が起こる薬があることに注意する. 2 抗てんかん薬の処方に必要な薬理項目とその意義(表4-1)抗てんかん薬を十分かつ安全に使用するために重要なのは,用量(開始量,維持量),増量幅,参照域の血中濃度(いわゆる有効血中濃度),T1/2,Tmaxであり(表4-2)1)~4),さらに薬物相互作用(多剤併用時の抗てんかん薬同士,あるいは抗てんかん薬以外の薬との併用時)も重要である.特にT1/2とTmaxは,発作が起こりやすい時間に最も高濃度になるようにするためには重要である.1. 開始量,維持量,増量幅(表2-2,表4-21)~4))a.副作用が少なく十分な効果を上げるのに重要難治てんかんとして紹介されてくる患者のなかには,開始量,維持量,増量幅が少ないことがしばしばある.開始量は通常は最低維持量であるが,CBZ,CZPなど開始時や増量時に副作用が起こりやすい薬では,最低維持量の半分で開始することや増量幅を減らすなどの工夫も必要である(第2章参照).不都合な現象(眠気,ふらつきなど)が起こった場合,量が多いときや増量幅が大きいときに起 抗てんかん薬の処方に必要な薬理理項目とその意義(表4-1)2 ●発作が起こりやすい時間に抗てんかん薬が最も高濃度になるようにして治療効果を高めるために,薬物動態が重要である. ●抗てんかん薬の使用で必要な薬理特性は,用量(開始量,維持量),増量幅,参照域の血中濃度(いわゆる治療域の血中濃度,有効血中濃度),T1/2,Tmax,併用薬剤との相互作用である. ●薬物動態に影響を与える要因には,年齢による薬物代謝の変化,蛋白結合率,剤型,食後か食前か,相互作用,肝障害・腎障害,妊娠などがある. ●血中濃度は治療効果および副作用と関連があり,定常状態,服用時間,測定時間,Tmax,T1/2を考慮することが重要である. ●血中濃度の測定は,有効な血中濃度のためだけではなく,副作用発現時,無効時,服用状況確認時,併用薬変更時,肝障害,腎障害合併時,妊娠予定,妊娠中などのときに必要である.POINT薬物動態と血中濃度モニター第4章27第4章 薬物動態と血中濃度モニター

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