2489小児血液・腫瘍学 改訂第2版
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 出血に伴う貧血としては,おもに外傷による貧血や,疾患そのものに伴う頭蓋内・肺・消化管・鼻からの出血などがある.急性型は体内を循環する血液量の減少による循環不全の症状が前面に出るが,慢性型は血色素量の減少による酸素供給の不足の症状が主体となる.小児では循環血漿量が少ないため少量の出血でもショックに陥ることもあるので,可能な限り迅速な出血部位の同定と対策が必要である.本項では,新生児期を除く小児期の出血性貧血について概説する. 年齢によって疾患が異なることを認識する必要がある1).① 新生児期:帽状腱膜下出血,頭蓋内出血,消化管出血,胎児母体間輸血,一卵性双生児の双胎間輸血,胎盤・臍帯異常,悪性腫瘍などによる出血,ビタミンK欠乏症,ミルクアレルギーなど.② 乳幼児期:ビタミンK欠乏症,胃横隔膜ヘルニア,Meckel憩室,消化管ポリープ,腸管壁内血管奇形,食道静脈瘤,特発性ヘモジデローシス,悪性腫瘍など.③ 学童/思春期:胃・十二指腸潰瘍,胃横隔膜ヘルニア,Meckel憩室,Mallory‒Weiss症候群,潰瘍性大腸炎,特発性ヘモジデローシス,悪性腫瘍など.1Meckel憩室 Meckel憩室は,消化管発生過程で生じる卵黄腸管遺残症の一形態である.憩室に接した回腸壁に形成される潰瘍から出血をきたす.潰瘍の発症機転は憩室内に迷入した胃粘膜組織からの胃酸分泌である.下血は前駆症状なく突然大量に認めることがある.発症年齢は小児期が40%を占め,特に8歳以下が多い.出血部位の検索には,原因となる異所性胃粘膜を検出する目的で99mTc O4‒シンチグラフィが有用であるが,感度は50~91%と報告されている2).所見が認められなくても否定できないこともあるので,注意が必要である.2腸管壁内血管異常 小腸あるいは結腸壁内の動脈瘤,動静脈奇形,血管腫,毛細血管拡張症など,血管異形成病変である.突然の大量下血で発症し,出血が持続すると輸血が必要となる.筆者らは急性リンパ性白血病(ALL)の治療中に突然の腹痛・大量下血で,ヘモグロビン(Hb)4.9 g/dLまで低下し,出血性ショック状態になった症例を経験している.緊急内視鏡検査を実施するも上部・下部消化管(結腸から回盲部まで)ともに明らかな出血源は同定できなかった.小腸出血を考慮し,緊急血管造影により上腸間膜動脈(superior mesenteric artery:SMA)が出血源と同定し,経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial emboliza-tion:TAE)にて安全に止血でき,その後の化学療法を継続できた(図1)3).3潰瘍性大腸炎 少量粘血便から血性下痢便あるいは大量下血までさまざまな便状を呈する.4逆流性食道炎 胃食道逆流症に伴う食道病変である.逆流した胃酸作用で食道粘膜にびらん,潰瘍が発生し,吐血と下血で発症する.小児では泣く,いらいらする,不眠,疝痛,哺乳不良などが食道炎を疑う症状である.乳幼児期に慢性鉄欠乏性貧血で発見されることもある.診断は内視鏡と食道粘膜生検で行う.5食道静脈瘤 胆道閉鎖症術後肝硬変(肝性),先天性または臍炎後の門脈閉塞(肝前性),あるいは肝後性門脈閉塞(Budd‒Chiari症候群)などに起因する食道粘膜下の静脈瘤では,破綻により大量出血を起こす.6胃・十二指腸潰瘍 学童期に好発する成人型消化性潰瘍が多い.さまざまな原因があるが,Helicobacter pylori感染症は重要であり,十二指腸潰瘍の83%,胃潰瘍の44.2%で感染が認められたとの報告もある3).H. pylori陰性潰瘍では,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)潰瘍に注意が必要である.急性胃粘膜病変(acute gastric mucosal lesion:AGML)は,急性胃炎と急性胃潰瘍病変を伴うものであり,心窩部痛,吐血や下血など突然の臨床症状で発症する.出血に伴う貧血定義・概念病因・病態・診断第Ⅱ部 各論(疾患)402血液・造血器疾患11A 赤血球の異常出血性貧血第1章

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