2489小児血液・腫瘍学 改訂第2版
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は年長児のT細胞性ALLに多く,緊急性が高い.頭痛,嘔吐,脳神経麻痺などの中枢神経症状は初発時には少ないが,再発の症状として重要である.2正常造血の低下による徴候 貧血による顔色不良,全身倦怠感,血小板低下による出血傾向,正常白血球の低下による感染症などがあげられる.1形態学的診断 診断の確定は,白血病細胞の増殖する主座である骨髄の穿刺または生検による.骨髄でリンパ芽球が全有核細胞の25%以上を占める場合にALLと診断確定する.Giemsa染色に加えてペルオキシダーゼ染色,エステラーゼ染色などを行う.ALLでは芽球のペルオキシダーゼ陽性率は3%未満である.FAB分類でL1~L3に分類される(表1).2免疫学的診断 ALLであることの確認および免疫学的分類のために,フローサイトメトリーによる白血病細胞表面マーカー検索が必須である.日本小児がん研究グループ(JCCG)による細胞表面マーカーに基づく免疫学的分類を表2に示す.3細胞遺伝学的診断 ALLにみられるおもな染色体・遺伝子異常を表32)に示す.最近の知見も含めた小児ALLの細胞遺伝学的異常の頻度を図13)に示す.これらの検出のために染色体分析(通常はG‒banding)を行うが,BCR‒ABL1など治療方針の異なる群の速やかな同定やETV6-RUNX1など通常の染色体分析のみでは検出率の低い異常を検出する目的で,FISH法やRT‒PCR法などを併用する.複数の転座を一度に検索できるmultiplex‒PCR法も保険診療で可能となっており,有用である.予後不良な低2倍体を見逃さないためにはフローサイトメトリーによるDNA indexの検索も有用である.特に一見,高2倍体(hyperdiploid)にみえるが,実は低2倍体(hypodiploid)の細胞が分裂期で倍加している像を呈している,いわゆるmasked hypodiploidの同定にはDNA indexが有用である. 現時点では日常診療における層別化等には利用されていないが,研究レベルでは後述する新たな病型の同定のためにマイクロアレイやゲノムアレイ,MLPA(multiplex ligation‒dependent probe amplifica-tion)法,さらには次世代シークエンサーなど,さまざまな手法による解析が進んできている.今後のbiology研究の進歩のために,付随研究への登録や積極的な細胞保存に取り組んでもらいたい.1小児ALLの治療成績 小児ALLの治療成績は,過去40年間に飛躍的に向上し,約70~85%の無イベント生存率(EFS),約80~90%の全生存率(OS)が達成されている4)5).表4に最近の世界の治療研究グループの治療成績,図24)に米国Children’s Oncology Group(COG)における治療成績の変遷を示す.これらの治療成績の進歩は,ランダム化比較試験(randomized controlled tri-al:RCT)を含む多数の臨床試験の積み重ねと,予後因子に基づく層別化の改善によって達成されてきた.2予後因子 すでに良好な治療成績をあげている小児ALLにおいて,短期,長期の毒性を軽減しつつ,治療成績を向上させるためには,予後因子に基づく精密な層別化治療が重要である.1)従来の予後因子a.年齢,性,白血球数,immunophenotype 年齢と白血球数は,そのほかの予後因子の解明に伴って徐々にその重要性が薄れつつあるが,B前駆細胞性ALLにおいては,いまだに一定の意義を有している.年齢,白血球数についてはいくつかの基準が存在するが,NCI/Rome基準(1歳以上10歳未満かつ白血球数50,000/μL未満をstandard risk,10歳以上かつ/もしくは白血球数50,000/μL以上をhigh risk)が標準的である.一方,T細胞性ALLにおいては年齢,白血球数の意義は少なくなり,治療反応性の重要性が高い.T細胞性ALLは,B前駆細胞性と比較して予後不良とされてきたが,最近の治療成績の向上に伴って差は縮小しつつある. 男児の予後は精巣再発の関与もあり,女児に比べて不良とされてきたが,最近では性差は消失傾向にあり,ほとんどの臨床試験グループは性を予後因子としていない.COGは,これまで男児の維持療法期診断・検査治療・予後A 造血器腫瘍 1.急性リンパ性白血病483小児がん第2章表1◆ALLのFAB分類ALL:芽球のペルオキシダーゼ陽性率は3%未満L1小細胞型均一な大きさで核細胞質比(N/C比)大.核小体は不明瞭.小児に多い.L2大細胞型大小不同.N/C比はL1より小さい.核小体は明瞭.成人に多い.L3Burkitt型芽球はL1より大きい.細胞質は広く,好塩基性.空胞が目立つ.核小体明瞭.成熟B細胞性腫瘍である.

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