2503助産師と研修医のための産科超音波検査 改訂第3版
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83 Column○2(p.9)で述べたように,産科の超音波検査を楽しみにして来院する妊婦や家族は多い。検査を楽しんでもらう必要はない,という意見がある一方,超音波検査を楽しんでもらうことで医療側と妊婦側との良好な関係を構築したい,という考えもある。本項では,助産外来で,コミュニケーションのツールとして超音波検査を利用したいと考える助産師を対象として,いくつかの参考例を提示する。51 留意すべき点① 最初に通常の妊婦外来で順調に経過している例であることを確認する。② 次に胎児心拍,胎位と胎勢,胎児の大きさ,羊水量を評価し,異常がないことを確認する。この段階で,「心臓が動いているのが見えます,これが頭です,大きさは正常範囲です,羊水の量は問題ありません」など一つひとつ説明しながら施行すると漏れがなくまた親切である。③ 超音波の安全性に配慮する(「1-3超音波の安全性」p.5)。通常のBモードの安全性は高いが,それでも長時間の観察は避けたほうがよい。私見であるが,30分以上は明らかに長すぎる。「短時間の超音波検査は問題ありませんが,長時間の検査についての安全性はよくわからない点もあるようです」と伝えると,ほとんどの人は長く見たいとは思わないだろう。またカラードプラ,パルスドプラ法は超音波強度が大きいので避けるべきである。3次元,4次元超音波検査は通常のBモードと同様に考える。④ 妊娠22週未満で胎児の性別を伝えることを控える。日本国内では性別を理由に中絶を選択する人は少ないと思われるが,現実に性別を理由とした中絶が世界には存在する。無用なトラブルを起こし得るし,より週数が進行しているほうが実際の観察も容易で確実である。聞かれたら「まだ性別を見る時期としては早すぎますね」と言えば十分である。⑤ 超音波画像を見せることが親子関係をよくするという意見もあるが,科学的な根拠はない。あまり超音波検査を受けない妊婦に対して,不安や不満を与える可能性があり,配慮が必要である。コミュニケーションツールとしての産科超音波検査5

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