2512高齢者診療のための臨床検査ガイド
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┃176┃●0.4~1.5 mg/dL【JCCLS共用基準範囲】●日本人間ドック学会の大規模調査では,年齢差は認められていない.基準値臨床的意義・ビリルビンはヘモグロビンの代謝産物である.老朽化した赤血球は脾臓でマクロファージに貪食され,赤血球中のヘモグロビンは分解され間接ビリルビン(IB)となり血中に排出される.水に不溶性のIBはアルブミンと結合し門脈経由で肝細胞に到達する.肝細胞に取り込まれたIBはグルクロン酸抱合され水溶性の直接ビリルビン(DB)となり,胆管に排出される.胆管から十二指腸に流出したDBは腸内細菌によりウロビリノゲンに分解され,一部は再吸収され尿中に排泄される.・総ビリルビン(TB)はDBとIBの総和である.グルクロン酸抱合前の非抱合型ビリルビンがIB,抱合型ビリルビンがDBとよばれる(図1).・TBの上昇,すなわち黄疸をみたときは,上記のどの段階で問題が起こっているかを考える.まずは大きくIB優位かDB優位かで分類するが,微妙なことも多いため結局は閉塞性黄疸の除外から進める.・IBの上昇は,肝細胞への取り込みやグルクロン酸抱合が間に合わないために起こる.相対的に間に合わない場合として溶血性疾患があり,処理すべきIBの増加による.絶対的に間に合わない場合としては肝細胞の減少があり,急性肝炎による壊死や肝硬変が原因となる.ただし肝炎の場合は肝細胞内の抱合型ビリルビンも漏れ出るためDBも上昇する.・DBの上昇は,肝細胞内でグルクロン酸抱合されたDBが血中に逆流することで起こる.ミクロな肝内胆管狭窄が両葉に多発することで起こる逆流が胆汁うっ滞であり,原発性胆汁性胆管炎(PBC)や薬物性肝障害(胆汁うっ滞型)がある.一方,肝門部から十二指腸乳頭部までの大きな胆管の閉塞で起こるのが閉塞性黄疸であり,原因には癌や結石が多い(図2).・体質性黄疸は人口の2~5%にみられる.ほとんどはGilbert症候群であり食後に改善することが多い.治療は不要である.同時に確認すべき他の検査値・DB優位であればまず閉塞性黄疸を疑い,緊急でドレナージを行うべきかの判断として胆管炎の有無(AST,ALT,ALP,WBC,CRPなど)を評価する.・閉塞性黄疸除外の後,溶血の有無(LD,K,AST)や肝合成能(Alb,ChE)を確認する.066血清ビリルビン含窒素化合物,生体色素,腎機能c

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