2513夜尿症診療ガイドライン2021
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4 ― 1.定義,原因,分類一次性夜尿症と二次性夜尿症 これまで夜尿が消失していた時期があったとしても6か月に満たない症例が一次性NE,これまで夜尿が6か月以上消失していた時期があった症例が二次性NEと定義されている2).一次性NEは75~90%,二次性NEは10~25%の頻度と考えられる10). 夜尿の消失していた年齢や,夜尿に対する治療の有無はこの分類には関係はしない4).この分類が診療上重要な理由は,二次性NE患者で,より多くの生活上のストレス[保護者の離婚,(患者の)同胞の誕生等]を経験していたり,精神疾患の併存率が高いからである4).そのほか,下部尿路感染症,外傷,脂肪腫,脊髄係留症候群などによる神経因性膀胱,けいれん性疾患,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS),糖尿病,尿崩症(diabetes insipidus),尿道狭窄,甲状腺機能亢進症などの疾患を考慮し11),これらの基礎疾患の治療を行う.単一症候性夜尿症と非単一症候性夜尿症 昼間のLUTSを合併する症例を非単一症候性NE(25%),合併しない症例を単一症候性NE(75%)とする10).昼間のLUTSを表3に示す7).非単一症候性NEの患者と単一症候性NEの患者は異なる病因をもっている可能性があり,異なる方法で管理する必要がある.参考:成人における夜尿症 NEの頻度は成長とともに減少するが,まれながら成人になってもNEが持続するとされている.それらのなかには,NEで密かに悩む成人は一定数存在すると考えられるが,正確な疫学的データは存在しない.さらに,幼少時期のNE治療と,成人してからの尿意切迫感,昼間の頻尿そして尿失禁などの症状との関連を示す報告がある12).成人のNEについては,OSAS13)や下部尿路閉塞などの泌尿器科疾患14)との関連を示唆する報告もあるが,さらなる報告が待たれる. NEの原因として,一つあるいは複数の要因が関与しているとされてきた15,16).ICCSの診療指針では,①睡眠から覚醒する能力,②夜間の膀胱の蓄尿能力(膀胱容量の減少),③夜間の尿の生成(夜間多尿)のミスマッチが原因であるといわれている7).この3つの要因のうち,123III.夜尿症の原因表3 昼間の下部尿路症状(LUTS)1.覚醒時の尿失禁2.尿意切迫感(急に起こる・我慢することが困難な強い尿意)3.排尿困難(尿線微弱・遷延性排尿・腹圧をかけての排尿)4.排尿回数の過少(1日3回以下)または過多(1日8回以上)(Nevéus T, et al. J Pediatr Urol 2020;16:10⊖19より改変)

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