2513夜尿症診療ガイドライン2021
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6 ― 1.定義,原因,分類抗利尿ホルモンの分泌低下31‒35)によるものとされるが,夜間の尿中へのカルシウム排泄量の増加36)や,糸球体濾過量の日内変動の異常37),飲水過剰や塩分・たんぱくの摂取過多38)が関与しているとの報告がある.発達の遅れ 神経生理学的な検討で,NE患者では対照群と中枢神経の発達の点で相違がみられている39‒41).膀胱機能の検査と脳波検査から,排尿筋過活動(detrusor overactivity:DO)と脳波所見が発達とともに改善し,睡眠中に膀胱内への尿の充満の認知と膀胱の収縮の抑制が可能になることが示されている41).遺伝的素因 両親のいずれかに夜尿の既往があれば,その児はそうでない両親をもつ児に比べて5~7倍夜尿になりやすく,両親ともに既往がある場合は,約11倍夜尿になりやすいという報告がある42).また,一卵性双生児の46%,二卵性双生児の19%が双方ともにNEであったとの報告がある43).遺伝子解析の結果から,現時点では13q13‒q14.344)(ENUR1),12q13‒q2145)(ENUR2),22q1146)(ENUR3)にNEに関連する遺伝子が存在すると推察されている.その他 心理学的異常や行動異常は,NEの原因というよりは,NEに起因する症状と考えられるようになってきた16,47).夜尿の原因をおもに精神的問題とする明らかなエビデンスは乏しいとされている7). 前項のNEの原因に沿って,夜間の膀胱の蓄尿機能(膀胱容量の減少),夜間の尿の生成(夜間多尿),さらにはその他の理由からNEをきたす可能性のある疾患と併存症を表4にまとめる. わが国ではNEの病型分類を考案し,各病型に対して治療方針を提案してきた.代表的な二つの分類を紹介する.帆足らや赤司らの提唱する分類(表5)48) 多尿型にはデスモプレシン療法,膀胱型には抗コリン薬,アラーム療法,そして混合型にはこれらの併用療法が推奨されている49).渡辺らの提唱する分類(図2)50) 膀胱内圧と脳波を同時に測定し,病型分類を行う.健常者は膀胱に尿が充満すると脳波上,浅い睡眠に移行し,覚醒して排尿するが,I型NEは脳波上,浅い睡眠に移行するが完全に覚456IV.夜尿症をきたす疾患と併存症V.これまで用いられてきた夜尿症診療における分類12

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