2527脳血管内治療の進歩ブラッシュアップセミナー2021
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114はじめに1 脳主幹動脈の急性閉塞に対する急性期血行再建術の治療成績の向上のためには体制整備,画像診断も重要だが,手技においては短時間での有効再開通が焦点となる. 多施設前向き研究で実証されたのは,前方循環系脳主幹動脈の急性閉塞に対する急性期血行再建術の内科治療に対する優越性である.当初はstent retrieverのみが有効性を示していたが,その後contact aspirationの非劣性が報告され,contact aspirationでもstent retriev-erでもほぼ同等の成績が達成可能とされる.一方,複数機器を組み合わせることで効率的な再開通が得られ,より有効な転帰が期待できるかもしれない,という考え方が存在する. 以下にそれぞれの手技とその発想の概要を示し,機器選択についての一案を示す.本稿では,stent retrieverもしくはaspiration cathe-terいずれか単一機器で治療を開始する戦略をsingle-device strategy,複数機器を最初から併用する戦略をdual-device strategyと呼ぶ.さらに,複数機器を組み合わせて血栓を回収する技術をcombined techniqueと称する.Stent retriever2 第二世代のstent retrieverでは内科治療に対する優越性が示されており,発症6時間以内での機械的血栓回収機器としてのエビデンスレベルは高い.さらに,microcatheter-com-patibleのデバイスは従来の脳血管内治療手技の延長線上に扱える点も有利である.しかし,血栓遠位でのunsighted操作が必須でperforationの可能性が潜在することは欠点である.また,現状の各種stent retrieverでは把持した血栓を取りこぼす可能性があり,さらに脳動脈壁への負荷や走行変化に起因する出血性合併症のリスクを伴う.Aspiration catheter3 Aspiration catheterでは血栓の近位側での操作で血栓に到達できることが多く,un-sighted操作が必須ではないことが利点である.しかし,吸引力を高くするためには相応急性期血行再建術における治療開始時の機器選択II 再開通療法 update20211国立循環器病研究センター脳神経外科 太田剛史 ◉すべての症例で複数機器を選択する必然性はない. ◉Stent retrieverとaspiration catheterとは血栓遠位と近位での操作という違いがある. ◉解剖学的なアクセスその他の条件を考慮して適切に開始機器を選択すべきである.ssential PointEE

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