2530ファブリー病UpDate改訂第2版
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後から腎不全に陥る患者が多い.また,不整脈,特に房室ブロックで急死する男性患者もいる.20歳を過ぎると男女の患者ともに心肥大を呈し,特に女性患者は40~50歳頃から心肥大,不整脈などの伝導障害を強くみる.男性患者では40~50歳には腎不全による腹膜透析あるいは血液透析に入る患者が多く,50~60歳には全身臓器不全で死亡する患者が多い.腎不全は,女性患者では約10%内外で,男性と比較して少ないが,肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)で心不全に陥る患者が多い.通常,女性患者は60~70歳前後で心不全により死亡することが多い.脳血管症状も重要であり,若年性脳卒中,脳梗塞患者のなかには,ファブリー病が存在する34). 年齢による組織障害の推移を図535)に示す.男性患者では上述の経過をとる場合が多いが,女性患者では患者により症状の程度は異なり,予後も異なる.b.診断 診断に際しては,以下の①~④に留意することが必要である. ① ファブリー病の臨床病型は,かつては古典型(classical form),腎亜型(renal variant),心亜型(cardiac variant)と分類されていたが,現在では腎亜型と心亜型を合わせて遅発型(later‒onset form,あるいはlate‒onset form)に分けられ,臨床症状の特徴により分類される. ② 生化学的診断は,MS/MS法により血獎中のGb3あるいはlyso‒Gb3を測定することで,患者,女性ヘテロ接合体を診断できる. ③ 酵素診断は,乾燥濾紙血(dried blood spot:DBS)もしくは白血球により,患者あるいは保因者を診断し(図6)2),さらに尿中に排泄されるGb3またはlyso‒Gb3を証明する. ④ ファブリー病の遺伝子異常は現在1,000種類以上が報告されており,病的変異,病的変異が疑われる変異,多型が知られている(図7).GLAの変異を同定することにより,患者の将来の臨床的予測,女性患者の診断,薬理学的シャペロン療法(pharmacological chaperone therapy:PCT)の適応,ERTでの抗体発現などを予測できる.遺伝子型と臨床病型の詳細は本書「B‒3分子生物学的病態生理学」の項(p.23)を参照されたい.6A ファブリー病の歴史と概要図5 ファブリー病の進行と組織障害との相関Gb3:グロボトリアオシルセラミド.(Germain DP, et al: J Am Soc Nephrol;18:1547‒1557)酵素治療の可逆時期?軽度蓄積細胞および組織への影響が始まる進行性の基質蓄積と非可逆的障害臓器不全に至る悪影響臓器不全組織への影響血管内皮にGb3蓄積全身の細胞にGb3蓄積第二段階の病態の開始時間基本的に可逆的な病態病態出生前小児期青年期20~30代30~60代

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