2530ファブリー病UpDate改訂第2版
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 ファブリー病の治療として,①対症療法,②ERT,③PCT,④基質合成抑制療法(substrate reduction therapy:SRT),⑤遺伝子治療があげられる(表2). 対症療法として,痛みに対してはカルバマゼピン(テグレトール®)あるいはガバベンチン(ガバペン®),また腎臓,心臓の庇護薬としてはアンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensin Ⅱ receptor blocker:ARB),β遮断薬が用いられる.腎不全に対しては腹膜/血液透析あるいは腎移植が行われている.詳細は本書「E‒1対症療法」の各項(p.184~203)を参照されたい. ERTは,2001年にEngらによりアガルシダーゼβが,Schiffmannらによりアガルシダーゼαが治験され,現在3剤[ファブラザイム®(アガルシダー治療4ゼβ),リプレガル®(アガルシダーゼα),アガルシダーゼ ベータBS点滴静注「JCR」(アガルシダーゼβに対するバイオシミラー)]が治療に使われており,多くの臨床的成果が報告されている35‒37). SRTは経口治療であり,GlcCer合成酵素を阻害し,Gb3などの糖脂質の蓄積を抑える.lucerastat,ven-glustatなどの製剤が開発中である15,16). 遺伝子治療は,現在,AAVベクターならびにレンチウイルスベクターでの治験が欧米で始まっており,治療効果が期待されている17‒19). ファブリー病では,ハイリスクスクリーニング,新生児スクリーニングなどによる早期診断,早期治療が非常に重要である.71 ファブリー病の歴史と概要図6 乾燥濾紙血(DBS)を用いたファブリー病の診断GLA:α—ガラクトシダーゼA.[Desnick RJ, et al:α‒Galactosidase A deficiency:Fabry dis-ease. In:Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, et al(eds), The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed. McGraw‒Hill, 2001:3733‒3774]151050男性患者女性患者GLA酵素活性(pmol/punch/時)コントロール図7 遺伝子異常と臨床症状の重症度IVS4+919G>Aは台湾に,E66Q変異は東洋人に,D313Yは西洋人に多い.(Oritz A, et al:Mol Genet Metab 2018;123:416‒427)臨床症状の重症度古典型1,000種類以上の病的変異.ノンセンス,欠失,フレームシフト,多数のミスセンス変異(例R227X,R342X,他多数)遅発型多型prevalence of the mutationA143Tp.D313Y p.S126G p.E66Qp.R118Cp.R112Hp.M296Ip.F113Lp.N215Sc.936+919G>Ap.R301Qp.R363H不明

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