2533術中脳脊髄モニタリングの指針2022
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46術中モニタリングの麻酔の概要1⿎ポイント精度の高い神経モニタリングのためには適切な麻酔管理が必須である.神経モニタリング時の麻酔管理においてはその安全性については十分な配慮が必要である. 各種神経モニタリングは麻酔の影響を受けるため,精度の高い神経モニタリングを実施するためには適切な麻酔法の実施が必須である.神経モニタリングの実施にあたっては次の点を提供する必要がある.①神経機能障害の予防のためには,外科医,麻酔科医,臨床検査技師,臨床工学技士などの多職種で連携・協力し,適切な神経モニタリングを実施する,②ベースラインおよびコントロール波形〔A-III章3記録方法(p.31)参照〕が記録できる麻酔法とし,波形が得られない場合は,患者の安全を優先したうえで,麻酔薬投与量の変更や麻酔法の変更を検討する,③神経モニタリング中は麻酔深度や筋弛緩レベルを一定にし,波形の変化を迅速にとらえられる麻酔管理とする,④術中に神経モニタの変化がみられた場合,関連する多職種で情報を共有したうえで,原因検索とともに正常化に向けた対応にあたる,⑤神経モニタに関連する有害事象発生の可能性を考慮し,その予防にあたる.上記を達成するためには,神経モニタリングの概要や麻酔の神経モニタリングに及ぼす影響を理解するとともに,神経モニタリング変化時の対応や神経モニタリングに伴う合併症の予防策を習熟している必要がある.麻酔関連薬剤だけでなく,血圧,貧血,体温なども誘発電位などに影響するため,その適切な管理も重要となる.日本麻酔科学会から「MEPモニタリング時の麻酔管理のためのプラクティカルガイド」が公表されているため,詳細は参照されたい1).誘発電位などの記録が可能な麻酔法は,浅麻酔になる傾向があり術中覚醒やバッキングなどのリスクを伴う.また,筋肉から記録する運動誘発電位(motor evoked potenital:MEP)などでは刺激に伴う合併症も報告されている.麻酔管理にあたっては,神経モニタリングの実施だけでなく,患者管理の安全性を優先することを肝に銘じる必要がある.神経モニタリングの方法や有効性だけでなく,その有害事象についても十分なインフォームドコンセントを実施することが重要である.▶引用文献 1) 日本麻酔科学会安全委員会 MEP モニタリングガイドライン作成 WG:MEPモニタリング時の麻酔管理のためのプラクティカルガイド.2018. https://anesth.or.jp/files/pdf/mep_moni-toring_practical_guide.pdf(アクセス日:2022年6月15日)(川口昌彦)鎮静薬2⿎ポイント鎮静薬はシナプスに作用して誘発電位を抑制する.全身麻酔でおもに用いられる鎮静薬には静脈麻酔薬(プロポフォール)と吸入麻酔薬(セボフルラン,デスフルラン)がある.モニタリング中は麻酔深度が一定になるように脳波による麻酔深度モニタを用いて鎮静薬の投与量を調節する.術中モニタリングの麻酔Ⅴ

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