2581内分泌外来診療Q&A
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QAQ第2章  視床下部・下垂体疾患クッシング病の場合は,コルチゾール3 µg/dL以上で診断されます.ここまでの診断過程で,クッシング病またはサブクリニカルクッシング病の可能性が高いことが判明したら,あとは内分泌代謝科専門医に紹介します.ちなみに,下垂体造影MRIでは,ACTH産生下垂体腫瘍は径5 mm以下の小さな腫瘍であることが多く,解像度の高い3テスラのMRIで施行するべきです.平行して,一晩大量デキサメタゾン(8 mg)抑制試験を施行します.クッシング病の場合は,翌日早朝時のコルチゾールが前値の半分以下になることが多いです.術前MRIが陰性でもクッシング病が疑われる場合は,放射線科医により,選択的下錐体静脈洞血サンプリングを行います.選択的下錐体静脈洞血サンプリングを含め診断確定のための検査は入院で行い,血中コルチゾール日内変動(23時のコルチゾールが5 µg/dL以上),CRH試験,DDAVP試験(保険適用外)などを追加します.❷  周期性クッシング症候群や異所性ACTH症候群の可能性もある.除外診断として,偽性クッシング症候群があげられ,アルコール依存症やうつ病で生じる可能性があります.アルコール依存症では,ACTH分泌過剰により,クッシング病類似の身体所見,デキサメタゾン抑制の欠如などの所見を呈しますが,数週間の禁酒で消失するとされています.うつ病の場合は,デキサメタゾンで抑制されませんが,通常クッシング徴候は伴いません.また,クッシング病ではDDAVP試験が陽性なのに対し,偽性クッシング症候群では陰性です.クッシング病が疑われながら,下垂体腫瘍が陰性で,選択的下錐体静脈洞血サンプリングでも陰性といった場合は,周期性クッシング症候群や異所性ACTH症候群の可能性があります.周期性クッシング症候群は,血中コルチゾールが著しく変動するまれな疾患で,下垂体性が54%,異所性ACTH症候群が26%,副腎性が11%と報告されています1).異所性ACTH症候群は文字どおり,下垂体外の腫瘍からACTHが分泌されるもので,原因疾患の多くは胸腺あるいは気管支のカルチノイド腫瘍ですが,小さいものが多く,診断確定は困難なことも多いです.03●クッシング病33Point❶  アルコール依存症やうつ病がある場合は,偽性クッシング症候群を念頭におく.クッシング病では,DDAVP試験が陽性なのに対し,偽性クッシング症候群では陰性となる(保険適用外使用なので専門医に委ねる).Point❶  随時のコルチゾール値が30 μg/dL超の場合は,緊急的にメチラポン(メトピロンⓇ:250 mg/cap)を3 cap 分3,ヒドロコルチゾン(コートリルⓇ:10 mg/錠)を朝1錠,クッシング病との鑑別が必要な疾患にはどのようなものがありますか.随時のコルチゾール値が著しく高値の場合にはどのように対処しますか.

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