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末梢神経と筋のみかた診断と治療社 | 書籍詳細:末梢神経と筋のみかた
原著第6版 日本語版 電子書籍付書籍

神戸市立医療センター中央市民病院

幸原 伸夫(こうはら のぶお) 翻訳

初版 A5変型判 並製 80頁 2024年11月01日発行

ISBN9784787826435

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定価:3,960円(本体価格3,600円+税)
  

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本書は,末梢神経・脊髄神経根に障害のある患者の検査のためのガイドブックである.筋の神経支配や末梢神経の分布の理解に役立つ手技の写真やシンプルな解剖学的模式図が満載,かつコンパクトにまとめられている.今回の改訂では,①最新の解剖学的名称の変更を反映,②脊椎と脊髄神経根,男性の鼠径部,女性の会陰を含む新しい図とイラストを追加,③易圧迫部位の一覧を加え模式図の該当部位を矢印で示した.神経筋疾患の診療にあたる初学者からベテランまで,すべての人に役立つ1冊.電子版へのアクセスもより容易となった.

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目次

はじめに  INTRODUCTION
圧迫性および絞扼性ニューロパチー  COMMON COMPRESSION AND ENTRAPMENT NEUROPATHIES
脊柱と脊髄神経根  THE SPINE AND SPINAL ROOTS
脊髄副神経  SPINAL ACCESSORY NERVE
腕神経叢  BRACHIAL PLEXUS
筋皮神経  MUSCULOCUTANEOUS NERVE
腋窩神経  AXILLARY NERVE
橈骨神経  RADIAL NERVE
正中神経  MEDIAN NERVE
尺骨神経  ULNAR NERVE
腰仙骨神経叢  LUMBOSACRAL PLEXUS
下肢の神経  NERVES OF THE LOWER LIMB
皮膚分節(デルマトーム)  DERMATOMES
筋の末梢神経と根支配  NERVE AND MAIN ROOT SUPPLY OF MUSCLES
よく用いられるテスト運動  COMMONLY TESTED MOVEMENTS

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序文

第6版改訂にあたって翻訳者の序

 本書の日本語版を普及させたいと考えた理由については第5版の序に書きましたのでここでは触れませんが,その頃に考えていた「本書はきっと多くの人に役立つものとなる」という確信は現実になりました.本書が多くの幅広い層の方に役立てていただいているとの話を耳にするたびに,訳者として,また一神経内科医として,とても嬉しい気持ちになります.末梢神経はともすれば複雑で覚えにくい,理解しがたい,と敬遠されがちですが,本書のようなわかりやすい写真と明快なシェーマがあると,意外にわかりやすいと感じるのではないでしょうか.
 本書は初版から80年以上にわたり世界中で読み継がれてきた稀な冊子です.戦傷者の神経障害をベッドサイドで正確に診断したいとする極めて実用的なところから始まりました.その精神は現在まで引き継がれ,いたずらに分厚く,大きくなることもなく,必要最小限の内容と携帯性を維持してきたことが世界中で支持されてきた大きな理由ではないかと考えています.カラー版となってみとれるような美しい図に変わったこともさらに普及に拍車をかけました.一日中でも眺めていたくなるような冊子ではないでしょうか.
 今回の改訂では脊髄根の図など,あると良いなあ,と考えていた部分が補足され,より完成した形になりました.多くの患者さんの診断が本冊子を傍らに置くことで,迅速により正確に行われることを願っています.

2024年4月
幸原伸夫



原著者の序

 1940 年にDr. George Riddoch は陸軍のConsultant Neurologist の職にあった.大戦中に末梢神経損傷に対処するためのセンターの必要性を痛感し,エジンバラ大学の外科教授であったProf. J.R. Learmonth と協力して,エジンバラ近郊のGogarburn とグラスゴー近郊のKillearnの脳神経外科に末梢神経損傷センターを設立した.ここでProf. Learmonth は総合病院で働く外科医たちのために,末梢神経損傷に関する図版入りガイドの制作を提案した.Dr. Russel の協力のもと,1941年に個々の筋力テストをしている写真をいくつか撮影した.1942年にDr. Ritchie Russelはオックスフォードに戻ったが,代わりにスコットランド部隊の神経科医であるDr. M.J. McArdleが仕事を引き継いだ.エジンバラ大学の医学イラストレーション部門の助けを借りながら,Dr. McArdleの手によりこの写真撮影はGogarburnで完成した.ルーズリーフ式にした約20 部の複製がスコットランドの外科医たちの間で回覧された.
 1942 年,Prof. Learmonth とDr. Riddoch は,多数の末梢神経の筋支配図(Pitres J-A and Testut L. Les Nerfs en Schémas, Doin, Paris, 1925. より改変)および皮神経の分布とデルマトームの図を加えた.これが1942 年に“Aids to the Investigation of Peripheral Nerve Injuries(War Memorandum No. 7)”として,Medical Research Council によって最初に出版され,翌1943年に改訂された.これが本書の基盤となる版になり,その後の30年間に何千部も印刷された.
 1972~1975 年の間に大幅な改訂が行われ,新たな写真や腕神経叢のカラー図などの多数の図版が追加され,“Aids to the Examination of the Peripheral Nervous System”(Memorandum No. 45)というタイトルで再出版された.この小冊子が医学生や開業医,さらには臨床神経学において広く使用されたことに対応した改訂で,戦時における神経損傷に重きをおいた当初の版とはかなり異なったものとなった.
 1984年,新版の準備のため,Medical Research Councilはこの本の出版権をThe Guarantors of Brainに移譲した.この際にいくつかの図の修正と腰仙骨神経叢の図が新たに加えられた.
 1943 年,1976 年,そして1986 年の版のための大部分の写真は,Dr. McArdle(1989 年に死去)が検者となっている.2000 年に出版された第4 版では新たなカラー図版に改訂され,Dr. M. D. O’Brien が検者となっている.腕神経叢や腰仙部神経叢を除くすべての図は描き直し,皮神経を含めた.2010年に出版された第5版では「はじめに」の部分を改訂し,三叉神経の表皮分布図を加えた.今回の改訂では,1)脊髄と脊髄神経根の図を追加し,2)絞扼性および圧迫性ニューロパチーを生じやすい部位を本文に追加し,かつ末梢神経の模式図に矢印でその部位を示した.また,3)男性の鼠径部と女性の会陰部のデルマトームの新たな図を加えた.神経の模式図は詳細な解剖学を意図してものではなく,病変レベルを決定するために用いられる一般的な神経支配順を示している.末梢神経の分枝パターンにはかなりの変異がある(Sunderland, 1978)ことには留意する必要がある.そのほか既存の図にいくつかの小さな変更を加えた.

M.D. OʼBrien
for The Guarantors of Brain