HOME > 書籍詳細

書籍詳細

糖尿病学2024診断と治療社 | 書籍詳細:糖尿病学2024

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院院長

門脇 孝(かどわき たかし) 編集

東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科教授

山内 敏正(やまうち としまさ) 編集

初版 B5判 並製 164頁 2024年05月30日発行

ISBN9784787826497

定価:11,000円(本体価格10,000円+税)
  

ご覧になるためにはAdobe Flash Player® が必要です  


電子版はこちらからご購入いただけます.
※価格は書店により異なる場合がございます.


(外部サイトに移動します)

(外部サイトに移動します)

糖尿病研究の最新動向の中から特にわが国発の重要課題を取り上げ,専門的に解説したイヤーブック.今年も,この1年の基礎的研究,臨床・展開研究の成果となる論文19編を収録した.糖尿病研究者のみならず,一般臨床医にとっても必読の一冊.

関連書籍

ページの先頭へ戻る

目次

口絵 
序文 
執筆者一覧 

基礎研究 
1.マクロファージを介した出産後の膵β細胞量減少メカニズム
[遠藤 彰,今井淳太,片桐秀樹] 
■はじめに 
■出産後膵β細胞量減少におけるマクロファージの関与 
■CXCL10—CXCR3axis でマクロファージは増加する 
■マクロファージによる膵β細胞の貪食 
■出産後膵島における膵β細胞死の有無の検討 
■出産後膵β細胞量減少にセロトニンシグナルが関与する 
■おわりに 

2.生体内でオートファジーの活性を評価できる遺伝子改変マウスを作製
[西田友哉,青山周平,綿田裕孝] 
■概要 
■はじめに 
■研究方法と結果 
■研究結果のまとめと考察
 
3.肥満センサーとしての脳内アミノ酸トランスポーター
[檜井栄一]
■はじめに:要旨
■イントロダクション
■視床下部にはLAT1依存性のアミノ酸取り込み系があり,その活性は代謝状態によって変動する 
■視床下部神経細胞のLAT1は体重の調節に重要である
■視床下部神経細胞のLAT1はBCAA バランスを調節する 
■視床下部神経細胞のLAT1はインスリン感受性やエネルギーバランスを調節する
■視床下部神経細胞のLAT1は交感神経活性を調節する
■視床下部神経細胞のLAT1はレプチン感受性を調節する
■VMH のLAT1は全身エネルギー代謝の調節に重要である
■Mechanistic target of rapamycin complex—1(mTORC1)はLAT1 下流の主要なメディエーターである
■おわりに 

4.腸内細菌を介した単純糖質がインスリン抵抗性を増悪させる
[窪田哲也,竹内直志,大野博司]
■はじめに
■本研究のアウトライン 
■糞便中の代謝産物が腸内細菌と臨床パラメータを結ぶ 
■インスリン抵抗性を有する被験者は糞便中の単純糖質が増加する 
■インスリン抵抗性に関連する腸内細菌の同定 
■腸内細菌と代謝産物のネットワーク解析 
■単糖類は腸内細菌・炎症関連遺伝子・炎症性サイトカインのハブとして機能している 
■A. indistinctus は糞便中の単糖類濃度を低下させ,インスリン抵抗性を改善させる 
■おわりに

5.アディポネクチン受容体を活性化する抗体を初めて取得
[浅原尚美,山内敏正,門脇 孝] 
■はじめに 
■AdipoR 抗体作製戦略 
■AdipoRアゴニスト抗体の取得 
■AdipoRアゴニスト抗体の耐糖能異常およびインスリン抵抗性に対する作用 
■AdipoRアゴニスト抗体のAdipoR経路活性化 
■AdipoRアゴニスト抗体のMASH モデルにおける抗炎症作用 
■AdipoRアゴニスト抗体の有用性 
■おわりに
 
6.腸におけるインスリン作用と脂肪性肝炎・肝がん
[添田光太郎,植木浩二郎] 
■はじめに 
■STAM マウスの導入 
■STAM マウスにおける血糖・血中インスリンの調節と肝発がんの関係 
■インスリン投与STAM マウスの肝臓のマルチオミクス解析 
■腸内細菌叢と宿主防御因子のインスリン投与による変化 
■NASH合併糖尿病患者のインスリン使用による腸内細菌叢の変化 
■STAMマウスの肝発がんとその腸内細菌叢の因果的関係 
■腸上皮特異的インスリン受容体欠損STAM マウスの必要性 
■ieIRKO—STAMマウスの腸
■ieIRKO—STAMマウスの肝臓
■ieIRKO—DIOマウスの表現型
■おわりに

7.ミトコンドリアリボソームの機能低下は糖尿病関連腎臓病の尿蛋白発症にかかわる
―腎糖新生律速酵素PEPCK1 の近位尿細管,腎臓における機能解析から―
[長谷川一宏,脇野 修]
■はじめに
■腎解糖・糖新生の最近の考え方
■腎糖新生の新規作用に関する,われわれの報告
■おわりに

臨床研究・展開研究 
8.緩徐進行1 型糖尿病(SPIDDM)の新診断基準
[及川洋一,島田 朗]
■はじめに
■緩徐進行1型糖尿病とは
■旧診断基準による診断のポイントとその問題点
■緩徐進行1 型糖尿病の新診断基準のポイント
■糖尿病の新規診断時における緩徐進行1型糖尿病の鑑別診断
■おわりに

9.高齢者糖尿病診療ガイドライン2023
[小倉雅仁,稲垣暢也]
■はじめに
■高齢者糖尿病の定義
■ガイドラインの見方および策定方法
■新設された章
■高齢者糖尿病の食事療法
■高齢者糖尿病の運動療法
■高齢者糖尿病の薬物療法
■おわりに

10.がん患者における糖尿病診療:腫瘍糖尿病学の時代へ
[大橋 健]
■はじめに
■糖尿病患者の死因におけるがん
■糖尿病とがん罹患リスク
■がん患者の糖尿病
■新たな学際領域としての腫瘍糖尿病学
■がん治療中の糖尿病管理
■がん患者における糖尿病治療に関するコンセンサスステートメント策定に向けて
■おわりに

11.日本の糖尿病死亡時年齢に関する記述疫学研究
[西岡祐一,今村知明]
■はじめに: リアルワールドデータ(RWD)の活用の現状
■背景:糖尿病死亡時年齢のデータの必要性
■記述疫学研究実施までの道のり
■まとめ

12.脂肪性肝疾患の新概念MASLD~No more NAFLD~
[川口 巧]
■はじめに
■脂肪性肝疾患の新概念MASLD
■MASLD and increased alcohol intake(MetALD)
■NAFLD とMASLD の比較
■糖尿病治療薬とMASLD 
■おわりに 

13.「CKD 診療ガイドライン2023」とDKD
[和田 淳] 
■はじめに:DKDの概念と日本語訳のその後の展開 
■尿アルブミン測定の意義 
■ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とDKD 
■顕性アルブミン尿を呈するDKD とHbA1c 7.0%未満の血糖管理 
■DKD 発症・進展抑制と集約的治療 
■SGLT2 阻害薬とDKD 
■今後の「CKD 診療ガイドライン」におけるDKD 治療の展望 

14. 有痛性糖尿病性末梢神経障害治療の現状と治療ガイドライン
[出口尚寿] 
■はじめに 
■わが国のDPNP 診療の実態 
■DPNP の治療 
■併用療法の有効性―OPTION—DM試験― 
■おわりに 

15. EMPA—ELDERLY
[高橋佳大,窪田創大,矢部大介] 
■はじめに 
■SGLT2阻害薬の血糖および体重・体組成への影響 
■SGLT2阻害薬の心・腎保護効果 
■2型糖尿病を有する高齢者におけるSGLT2阻害薬の適正使用 
■高齢者における潜在的な有害事象―サルコペニア― 
■EMPA—ELDERLY試験 
■おわりに

16.糖尿病性腎症における新規MR拮抗薬への期待と課題
[川浪大治] 
■はじめに 
■糖尿病性腎症の成因 
■リガンド非依存性のMR 活性化,アルドステロンブレイクスルーと糖尿病性腎症 
■MR 拮抗薬の歴史と新規MR 拮抗薬フィネレノン 
■フィネレノンの臨床的エビデンスとポジショニング 
■エサキセレノンに関するエビデンス 
■ガイドラインにおける新規MR拮抗薬の位置づけ 
■新規MR 拮抗薬の今後の課題 

17.週1回投与型インスリンの有効性と安全性
[馬場園哲也] 
■はじめに 
■長時間作用型基礎インスリン製剤の開発 
■週1回投与型インスリンへの期待と開発 
■イコデクに対するONWARDS 試験 
■BIF の臨床試験 
■今後の期待と課題 

18.セマグルチドと心不全・肥満症
[伊藤 浩] 
■はじめに 
■肥満/糖尿病とHFpEF:疫学 
■Obese HFpEF の機序 
■STEP—HFpEF試験の目的と結果および解釈 
■セマグルチドのobese HFpEF に対する効果は体重減少を介したものか? 
■STEP—HFpEF試験のサブ解析 
■HF治療におけるSGLT2阻害薬とGLP—1受容体作動薬の役割とは 
■今後の展開 

19.糖尿病とスティグマ
[加藤明日香] 
■はじめに 
■世界の糖尿病スティグマのまん延度 
■国際的コンセンサス 
■日本発信の介入研究 
■糖尿病スティグマ研究の動向 
■今後の展望

ページの先頭へ戻る

序文

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけも変わり,社会においては,4年近くに及んだコロナ禍から日常が戻ってきた様子が伺える.日本糖尿病学会年次学術集会は,5年ぶりに現地会場を基本とした開催となり,この時期に合わせ従来通り「糖尿病学」をお届けできる運びとなった.

 さて,この一年も様々なテーマが話題となった.『糖尿病学2024』では,基礎研究の話題として,マクロファージを介した出産後の膵β細胞量減少メカニズム,生体内でのオートファジー活性の評価系の樹立,肥満センサーとしての脳内アミノ酸トランスポーター,腸内細菌とインスリン抵抗性,アディポネクチン受容体を活性化する抗体の初の取得,腸におけるインスリン作用の発見,糖尿病関連腎臓病の新しいメカニズムなどの最新知見をわかりやすく説明していただいた.

 本書では,臨床研究・展開研究の話題として,緩徐進行1型糖尿病の新診断基準,脂肪性肝疾患の新概念
“MASLD”,「CKD診療ガイドライン2023」とDKD(糖尿病関連腎臓病)など,新しい疾患概念や診断基準を紹介いただいた.また,有痛性糖尿病末梢神経障害治療ガイドライン,EMPA—ELDERLY,糖尿病性腎症における新規MR拮抗薬,週1回投与型インスリン,セマグルチドと心不全・肥満症など,新しい治療法における旬の情報も掲載している.さらに,高齢者糖尿病診療ガイドライン2023,がん患者における糖尿病診療,日本における糖尿病死亡時年齢,糖尿病とスティグマなど,「糖尿病のない人と同じ寿命,健康寿命,QOLを目指す」という糖尿病の治療目標の観点から,身体的のみならず社会的・心理的も含めた諸課題と指針を整理していただいた.

 お陰様で,今年は19編の珠玉の論文をこの一冊に収載することができた.いずれも研究者の弛まざる努力と英知と熱意が光り輝く論文である.できるかぎり新しい情報を発信するため,非常に短い期間でご執筆いただいた著者の先生方に心より深謝申し上げる.

令和6年4月
門脇 孝
山内敏正