教えて! 不妊治療の排卵誘発 ビジュアルガイド診断と治療社 | 書籍詳細:教えて! 不妊治療の排卵誘発 ビジュアルガイド
群馬大学医学部産婦人科
岩瀬 明(いわせ あきら) 編者
東京大学医学系大学院産婦人科学講座
平池 修(ひらいけ おさむ) 編者
川崎医科大学産婦人科学・川崎医科大学附属病院産婦人科
太田 邦明(おおた くにあき) 編者
初版 B5判 並製 160頁 2024年12月13日発行
ISBN9784787826640
定価:5,500円(本体価格5,000円+税)冊
不妊治療の排卵誘発をイラスト50点超と丁寧な解説でビジュアルに理解できる1冊.排卵誘発前の基礎知識,薬剤の種類と作用機序,ゴナドトロピン療法を中心とする投与法,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の病因・診断・予防法を紹介し,実際の採卵手技(麻酔・合併症)などを解説し,排卵誘発に関係する保険診療についても掲載している.
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目次
序 文
執筆者一覧
おもな略語一覧
第1章 排卵誘発前に知っておくべきこと
1. 排卵誘発前に調べておく検査
2. 排卵誘発を始めるタイミング
Column ピル製剤の役割と遺残卵胞―低刺激ARTにおけるkey medicine―
3. 排卵誘発を終えるタイミング
4. いざ採卵へトリガーをかけてみよう
Column 空胞卵胞症候群
5. 排卵誘発の適応と治療アルゴリズム
Column ボローニャ基準
Column ポセイドン基準
第2章 薬剤の基本:種類と作用機序
1 排卵誘発薬とその作用
1. クエン酸クロミフェン
2. アロマターゼ阻害薬
3. hMG/pFSH製剤
4. rFSH製剤
5. GnRHアゴニスト製剤
6. GnRHアンタゴニスト製剤
7. hCG/リコンビナントhCG製剤
8. プロゲスチン製剤
9. アゴニスト
10. エストロゲン製剤
11. メトホルミン
2 トリガーとその作用
1. ヒト絨毛性ゴナドトロピン
2. コリオゴナドトロピン アルファ(遺伝子組換え)
3. GnRHアゴニストによるflare up
Column デュアルトリガー/ダブルトリガー
第3章 投与法(投薬療法)
1 排卵誘発法/卵巣刺激法
1. クロミフェン療法
2 第1度無月経
1. セキソビット療法
2. レトロゾール(アロマターゼ阻害薬)
3. ゴナドトロピン療法
4. GnRHアゴニスト法
5. GnRHアンタゴニスト法
6. PPOS法
7. 早発卵巣不全症例に対する調節卵巣刺激
3 排卵誘発トピックス
1. ランダムスタート法
2. DuoStim法
第4章 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
1 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の病因
1. 卵巣過剰刺激症候群の発症機序
2 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の診断
1. 卵巣過剰刺激症候群の診断 重症度評価
3 卵胞過剰刺激症候群(OHSS)の治療
1. 1 輸液/2 透析/3 バイアスピリン
4 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こさないために
1. カベルゴリン
2. アロマターゼ阻害薬
3. GnRHアンタゴニスト
第5章 採卵手技
1. 採卵前後の流れ
2. 麻酔方法
3. 採卵手技
4. 合併症
第6章 保険診療と排卵誘発
1. 一般不妊治療管理料
2. 生殖補助医療管理料
Column 卵子凍結
索引
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序文
1978 年7 月25 日,世界最初の体外受精児:Louise Joy Brown の誕生を嚆矢として,不妊治療における体外受精(in vitro fertilization:IVF)の臨床応用に新時代が到来した.標準的な体外受精一胚移植法(IVF‒ET:in vitro fertilization‒embryotransfer)の体系は1990 年代後半までに確立されたが,そこで重要な役割を担ったのが調節卵巣刺激(controlled ovarian stimulation:COS)の概念である.
IVF におけるCOS は,一般的不妊治療による排卵誘発方法とは趣を異にしている.上述のLouiseJoy Brown 氏事例においては自然周期採卵がおこなわれたが,現実的には予定された時間における採卵が望ましいことから,採卵タイミングを決定するため,尿中黄体化ホルモン(luteinizing hormone:LH)サージの発来を確認してから36 時間後に腹腔鏡を用いて採卵することが次に考案された.1980年に第2出産例を報告したLopata らは自然周期における排卵前卵胞からの採卵を,そして同年Woodらはクロミフェン周期での採卵を報告した.さらに,翌年Jones らはhuman menopausal gonadotropin(hMG)‒ human chorionic gonadotropin( hCG)製剤を用いた卵巣刺激を報告した.しかしながら一番インパクトがあったのは,1984 年Porter らの報告である.彼らは臨床応用されて間もない
GnRH アゴニストを用いて強力に下垂体からのゴナドトロピン分泌を抑制し,外因性に純化folliclestimulating hormone( FSH)/hMG製剤を投与して卵胞発育を人為的に調節するというCOS法を報告し,GnRH アゴニスト+ゴナドトロピン・プロトコルはCOS の標準法として長らく汎用されたが,現在ではGnRH アンタゴニストや純化FSH,遺伝子組替えFSH などが開発され用いられている.その後,月経周期にかかわらず排卵誘発が可能であるランダムスタート法,DuoStim 法などが登場し,2015 年にKuang らが報告したProgesterone Primed Ovarian Stimulation(PPOS)法は,内因性LHサージをプロゲスチンの併用により抑制する方法であり,安価・容易・時間的拘束からの解放が実現されたため,現在同法がわが国では爆発的に増えている.
このように排卵を適切に調節する目的で新しい製剤や方法が次々に開発・報告されているが,その適用と応用を学習することは臨床医にとってはときに難しい.しかし,本書は,不妊治療の実践書として,とかく初学者にはとっつきにくい「排卵誘発」をテーマにした企画として,診断と治療社から刊行依頼があり,編者を中心とした斯界で著名な一流医師集団の執筆により実現したものである.また,一般不妊治療における排卵誘発は,一度覚えておくと,その理論的背景がCOS に直結することも諸氏はおわかりのことであろう.
排卵誘発に関連する女性内分泌の基礎は類書を参照していただきたい.本書は排卵誘発をこれからはじめる研修医または新たに学習したいベテラン産婦人科医いずれにも理解されやすい,理論と実践的方法を網羅した内容であり,排卵誘発診療の心強い1 冊である.本書に記載のある排卵誘発方法はいずれも既知のものであるが,この先にまた新しい排卵誘発方法が登場してくることが予想される.本書を通読していただき,ぜひ読者の中から世界中をあっといわせる・悔しがらせる新しい排卵誘発方法を発表していただくことを期待したい.
2024 年9 月12 日 秋めいた東京の空の下で(第64 回日本産科婦人科内視鏡学会学術講演会中)
岩瀬 明
平池 修
太田邦明