本書は,末梢神経・脊髄神経根に障害のある患者の検査のためのガイド.カラー写真と簡潔な説明,詳細な模式図,神経と根支配などを掲載し,運動系と感覚系の検査に必須の知識をコンパクトにまとめた.徒手筋力テストや神経支配などが,いつでもどこでもすぐにわかる携帯サイズ.末梢神経疾患や脊髄疾患,神経筋疾患の診療にあたる初学者からベテランまで,すべての人に役立つ1冊です.電子版のアクセス権付き.スマホ,PCなどの電子機器でもご活用ください.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
はじめに INTRODUCTION
脊髄副神経 SPINAL ACCESSORY NERVE
腕神経叢 BRACHIAL PLEXUS
筋皮神経 MUSCULOCUTANEOUS NERVE
腋窩神経 AXILLARY NERVE
橈骨神経 RADIAL NERVE
正中神経 MEDIAN NERVE
尺骨神経 ULNAR NERVE
腰仙骨神経叢 LUMBOSACRAL PLEXUS
下肢の神経 NERVES OF THE LOWER LIMB
皮膚分節(デルマトーム) DERMATOMES
筋の末梢神経と根支配 NERVE AND MAIN ROOTSUPPLY OF MUSCLES
よく用いられるテスト運動 COMMONLY TESTED MOVEMENTS
ページの先頭へ戻る
序文
翻訳者の序
本書(旧版)の存在を知ったのは私が京都大学神経内科で働き始めた 25年前のことです.
米国から戻ってきたばかりの梶 龍兒先生(現徳島大学神経内科教授)が「アメリカのレジデ
ントは皆この本を白衣のポケットにいれて勉強しているんだ」と言いながら示してくださっ
たのが本書でした.小冊子ですが美しい写真と簡潔な説明,素晴らしい模式図,神経と根
支配などが掲載されており,梶先生の言葉の通り脱力やしびれを持つ患者を診察する上で
とても役立ちました.以来宝物としてずっと愛用しています.私の勤務する病院では研修
医や学生が回ってくると,神経筋疾患患者の回診や筋電図の時に必ず簡単な末梢神経や根
の支配の質問をします.たとえば前腕の伸展に関わる神経は?と尋ねます.驚いたことに
橈骨神経,後骨間神経と即答できる研修医は半分もいませんし,それを英語でいうと?と
質問しても答えられない人も多い.そこで本書を見せながら徒手筋力テストと神経支配の
理解の大切さを伝えると,多くの研修医が本書に釘付けになり「わかりやすい冊子ですね,
私も欲しい」と言います.こういった経験から本書が末梢神経疾患や脊髄疾患,神経筋疾患
の診療にあたる初学者からベテランまで,すべての人々に役立つであろうことを確信し,
日本語版の出版を企画しました.幸いにも診断と治療社および原書出版元の Elsevier社の協
力で,デジタル版使用権(使用法は前見返し参照)を含めた形での日本語版の出版が実現す
ることになりました.
本書を読みながら初学者に学術用語を英語(学名であるラテン語とほぼ同じです)で覚え
てもらうことも 1つの目的です.そのため見出しはすべて日本語と英語を並記しました.や
や図版の文字が多くなっていますが,必ず両方に目を通してください.なお神経や筋の名
称は日本解剖学会監修の「解剖学用語改訂 13版」(医学書院, 2007)に準拠しました.本書
は医学生や医師のみならず神経疾患,整形外科疾患,リハビリテーション医学に関わるす
べての人に「今日から」役立つ本であると信じています.どうかポケットに入れて持ち歩き,
ボロボロになるまで使って下さい.
最後に本書出版の意義にご理解をいただき,出版に向け尽力していただきました診断と
治療社編集部の荻上文夫様,堀江康弘様,また訳稿を精読していただき多くの意見をいた
だきました同僚の川本未知先生にこの場を借りて深謝いたします.
2015年 11月 5日
幸原伸夫
原著者の序
1940年にDr. George Riddochは陸軍のConsultant Neurologistの職にあった.大戦中に末
梢神経損傷に対処するためのセンターの必要性を痛感し,エジンバラ大学の外科教授であっ
たProf. J.R. Learmonthと協力して,エジンバラ近郊のGogarburnとグラスゴー近郊の
Killearnの脳神経外科に末梢神経損傷センターを設立した.ここでProf. Learmonthは総合
病院で働く外科医たちのために,末梢神経損傷に関する図版入りガイドの制作を提案した.
Dr. Ritchie Russelの協力のもと,1941年に個々の筋力テストをしている写真をいくつか撮
影した.1942年にDr. Ritchie Russelはオックスフォードに戻ったが,代わりにスコットラ
ンド部隊の神経科医であるDr. M.J. McArdleが仕事を引き継いだ.エジンバラ大学の医学イ
ラストレーション部門の助けを借りながら,Dr. McArdleの手によりこの写真撮影はGogarburn
で完成した.ルーズリーフ式にした約20部の複製がスコットランドの外科医たちの間で回
覧された.
1942年,Prof. LearmonthとDr. Riddochは,多数の末梢神経の筋支配図(Pitres J-A andTestut
L. Les Nerfs en Sche´mas, Doin, Paris, 1925.より改変)および皮神経の分布とデルマ
トームの図を加えた.これが1942年に “Aids to the Investigation of Peripheral Nerve Injuries
(War Memorandum No. 7) ”として,Medical Research Councilによって最初に出版さ
れ,翌1943年に改訂された.これが本書の基盤となる版になり,その後の30年間に何千部
も印刷された.
1972~1975年の間に大規模な改訂が行われ,多数の新しい写真や図を加え, “Aids to the
Examination of the Peripheral Nervous System”(Memorandum No. 45)というタイトルで
再出版された.この小冊子が医学生や開業医,さらには臨床神経学において広く使用され
たことに対応した改訂で,戦時における神経損傷に重きをおいた当初の版とはかなり異なっ
たものとなった.
1984年,新版の準備のため,Medical Research Councilはこの本の出版権をThe Guarantorsof
Brainに移譲した.この際にいくつかの図の修正と腰仙骨神経叢の図が新たに加えられた.
1943年,1975年,そして1986年の版のための大部分の写真は,Dr. McArdle(1989年に
死去)が検者となっている.第4版からはカラー写真に入れ替え,腕神経叢と腰仙骨神経叢
を除きすべての図は描き直した.第5版では,Introductionを改訂し,新たに三叉神経の皮
膚分布図を加えた.その他,既存の図にはいくつかの小さな修正を施した.
M.D. O’Brien
for The Guarantors of Brain