本書は,2018年12月発行の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』の追補版にあたり,「ガイドラインの現状と課題」,「モニタリングの結果とガイドラインの効果」について記載を加えた.また診療マニュアルでは主に選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)であるドチヌラドに関するアップデートを行っている.なお,ドチヌラドに関する記載が加わったことを勘案し,「尿酸降下薬の薬理学的分類と特徴」,「ドチヌラドの国内での承認データをエビデンスとした特徴」を記載することで対応した.
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目次
●追補版発刊に寄せて
●『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版]』執筆者一覧
●追補版の概要と『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』との対応
●クリニカルクエスチョンと推奨文
●略語一覧
Information
第1章 総 論
1 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』の現状と今後の課題
2 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』活用状況に関するアンケート調査
第2章 治 療
1 痛風関節炎と痛風結節
2 尿酸降下薬の薬理学的特徴
3 尿酸降下薬の種類と選択
4 高尿酸血症
5 腎障害
6 尿路結石
7 高血圧
8 動脈硬化
9 心不全
10 メタボリックシンドローム
11 腫瘍崩壊症候群における高尿酸血症
12 生活指導
13 小児の高尿酸血症
14 医療経済の視点と高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン
付 録
尿酸降下薬一覧表(2022年1月現在)
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序文
追補版発刊に寄せて
食生活の欧米化と飽食の時代が近年の高尿酸血症・痛風患者数の増加に大きく影響し,高尿酸血症・痛風は“ありふれた生活習慣病”となりました.痛風患者は経年的に増加し,2019年の国民栄養基礎調査では125万人,高尿酸血症患者も1,000万人と推定されています.高尿酸血症は痛風・尿路結石・腎障害のリスクのみならず,脳心血管イベントリスクである可能性が示唆され,2020年から始まった循環器病対策推進基本計画に高尿酸血症は循環器疾患のリスクとなる生活習慣病として記載されています.一方で高尿酸血症・痛風は合併症が多岐にわたっています.多くの診療科が高尿酸血症・痛風診療を担当するという特徴があるために,各科で治療方針に違いがあることは容易に想像できます.そこで国民が均質な医療を享受するためのよりどころの1つとしてガイドラインが必要であり,日本痛風・尿酸核酸学会では,『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』第1版を2002年に,第2版を2010年に,そして第3版を2018年に発刊して,わが国における高尿酸血症・痛風の診療の標準化に貢献しました.本冊子は,『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』(以下『第3版』)の追補版です.
『第3版』は「7つのクリニカルクエスチョンに対する推奨文」と「高尿酸血症・痛風の診療マニュアル」から構成されています.クリニカルクエスチョンを作成しGRADE法に則して網羅的文献検索に基づいたエビデンスの収集と治療の益と害のバランスの評価に加え,患者の価値観や希望ならびに医療経済の観点も考慮して推奨文を作成しました.今日,ガイドラインは発刊後にその医療への効果をモニタリングすることが求められています.そのために『第3版』の発表後に日本痛風・尿酸核酸学会が調査した普及状況とその効果が評価されました.2020年に米国リウマチ学会から痛風診療ガイドラインが発刊され,わが国ではガイドライン作成法の改訂が示され,今後の本ガイドラインの課題も見えてまいりました.また2019年に高尿酸血症・痛風治療の新しい尿酸排泄促進薬である選択的尿酸再吸収阻害薬ドチヌラドが使用可能となりましたが,これらを含めてガイドラインを加筆修正する必要性が生じました.しかし,ガイドラインをアップデートする時期ではないと考えられましたので,本追補版を作成しました.[第1章 総論1]として『第3版』の現状と課題を,[第1章 総論2]として上述のモニタリングの結果を示して本ガイドラインの効果を記載し,また「高尿酸血症・痛風の診療マニュアル」の治療の章に,ドチヌラドに関連した加筆修正を行っています.
追補版加筆修正にあたっては,選択的尿酸再吸収阻害薬ドチヌラドが加わったことを勘案し,①尿酸降下薬の薬理学的分類とそれぞれの特徴を記載する,②尿酸排泄促進薬一般として捉えられるところにドチヌラドを追記する,③ドチヌラドの国内での承認データをエビデンスとした特徴を記載する,ことで対応しました.なお,尿酸排泄促進薬の分類については本書に限定したものであり,今後の評価が必要です.またCARES研究についても言及しました.
ガイドラインは重要な医療行為に対して患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨文と定義されています.良質な診療を行う補助として,臨床の現場で個々の症例に応じた個別の判断が下される際に用いる参考資料です.日常診療を束縛するものではありません.『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』およびこの追補版が臨床の現場で適正に活用され,1人でも多くの患者さんと医療従事者の診療の意思決定に役立ち,1人でも多くの患者さんが良質な医療を享受できることを願います.
2022年1月
一般社団法人 日本痛風・尿酸核酸学会
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』
改訂委員長 久留一郎