多くの領域の医師・研究者によって,最新の知見をわかりやすくまとめた診療ガイドライン.GRADE法に基づいて作成されたCQ形式のPart1と,GRADE法ではカバーできない領域を,様々な専門家が解説したPart2の二部構成となっている.冒頭では,患者向けのクイックリファレンスも掲載している.診療に関わる全ての医師だけでなく,患者も対象とした,ANCA関連血管炎の理解や診療の一助となる一冊.
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目次
口絵カラー
診療ガイドラインのクイックリファレンス
1.診療ガイドライン作成の背景と目的
2.診療ガイドラインの使い方
3.治療アルゴリズム・クリニカルクエスチョンと推奨
推奨と解説の読み方
執筆者一覧
序
Part 1 診療ガイドライン
I 背景・目的と使用上の注意
1.本診療ガイドライン作成の背景と目的
2.本診療ガイドラインの対象疾患
3.本診療ガイドラインの利用者
4.使用上の注意
II 診療ガイドライン作成組織
1.診療ガイドライン作成
2.診療ガイドライン作成資金
3.利益相反
III 重要臨床課題・アウトカムとクリニカルクエスチョン
1.重要臨床課題の選択
2.アウトカムの抽出
3.クリニカルクエスチョン
IV システマティックレビュー,エビデンスの質(確実性)の評価と推奨の作成
1.システマティックレビューでの論文採用基準
2.GRADEシステムについて
V 推奨
1.CQ1の推奨のまとめ
2.CQ1の推奨と解説(推奨①)
3.CQ1の推奨と解説(推奨②)
4.CQ1の推奨と解説(推奨③)
5.CQ2の推奨と解説
6.CQ3の推奨と解説
VI 患者アンケート調査
1.目的と概要
2.結果
VII 害について
1.ANCA関連血管炎治療の全般的安全性
2.難治性血管炎に関する調査研究班の観察研究における検討
3.海外の臨床試験・観察研究におけるエビデンス
VIII コストについて
1.医療経済の考え方とコストの種類
2.AAV患者の医療費負担の違い
3.AAV患者の直接医療費の推定
IX 診療ガイドラインをひろめるために
1.診療ガイドラインの促進要因
2.診療ガイドラインの阻害要因
X 外部評価
XI モニタリングと監査
1.モニタリング
2.監査
XII 診療ガイドラインの改訂
1.本診療ガイドラインの改訂予定
2.改訂手続き
Part 2 ANCA関連血管炎の基礎と臨床
I 総論
1.血管炎とは
2.ANCAとAAV
3.疫学
II 病因
1.遺伝的素因
2.薬剤・環境要因
III 病態
1.ANCAと病態
2.自然免疫の役割
3.獲得免疫の役割
4.サイトカイン・ケモカイン
5.病態からみた治療標的
IV 診断へのアプローチ
1.自覚症状
2.他覚所見
3.検査所見
V 診断
1.顕微鏡的多発血管炎
2.多発血管炎性肉芽腫症
3.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
4.分類不能ANCA関連血管炎 ― ANCA陽性間質性肺炎を中心に
VI 疾患活動性の評価
1.腎
2.肺
3.神経
4.頭頸部
5.皮膚
VII 鑑別診断
1.血栓塞栓症
2.感染症
3.腫瘍
4.薬剤
5.血管炎を含む膠原病
6.その他
VIII 治療
1.治療アルゴリズム
2.主要な治療薬の使用方法
2.1 グルココルチコイド
2.3 アザチオプリン
2.5 シクロスポリン
2.7 タクロリムス
2.2 シクロホスファミド
2.4 メトトレキサート
2.6 ミコフェノール酸モフェチル
2.8 リツキシマブ
3.補助療法
4.限局型血管炎の治療
4.1 腎
4.3 神経
4.5 皮膚
4.2 肺
4.4 頭頸部
5.感染症対策
IX 進行性腎障害に関する調査研究班・日本腎臓学会による
「エビデンスに基づく急速進行性腎炎症候群(RPGN)診療ガイドライン 2014」
1.「急速進行性腎炎症候群(RPGN)診療ガイドライン 2014」の概要
2.RPGN診療ガイドライン2014の特徴
X 予後
1.生命予後
2.臓器障害別の予後
付録
1.EMEAによる原発性全身性血管炎分類アルゴリズム
2.ANCA関連血管炎の病理組織
3.EULARの重症度分類
4.BVAS
5.VDI
6.BSR/BHPR AAV診療ガイドライン
略語一覧
索引
推奨作成関連資料は下記ホームページの本書紹介ページにて掲載
[http://www.shindan.co.jp/]
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序文
抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)は,ANCAが病態に関与していると考えられている血管炎で,腎臓,肺,神経系など様々な臓器に障害がみられる.その早期診断は困難な場合があり,臓器障害の程度が強いときは,治療抵抗性で予後不良である.
この難治性疾患であるAAVに対して,わが国では2011年にAAV診療に関連する厚生労働省研究班の3班〔厚生労働省「ANCA関連血管炎のわが国における治療法確立のための多施設共同前向き臨床研究班(研究代表者:尾崎承一)」「難治性血管炎に関する調査研究班(研究代表者:槇野博史)」「進行性腎障害に関する調査研究班(研究代表者:松尾清一)」〕により「ANCA関連血管炎の診療ガイドライン」が作成され,2014年にその改訂版が発刊された.その後もわが国をはじめ,世界各国で精力的に研究が行われ,ANCA測定試薬の精度向上,生物学的製剤であるリツキシマブの保険適用など著しい進歩があった.これらをふまえ,今回新たに「ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017」を作成した.
本診療ガイドラインは,AAVを有する患者およびその家族,AAV診療に携わる非専門医・一般医,各領域の専門医を対象とし,最新の知見を取り入れ作成してある.内容は大きくPart 1「診療ガイドライン」とPart 2「ANCA関連血管炎の基礎と臨床」の二部で構成されている.
Part 1は,厚生労働省「難治性血管炎に関する調査研究班中小型血管炎臨床分科会(研究代表者:有村義宏,分科会長:針谷正祥)」が担当し,可能な限りGRADEシステムに準拠して作成した.GRADEシステムの特徴は推奨の強さをエビデンスレベルだけではなく,価値観や好み,医療資源なども考慮して判定し,判定の透明性を高くしたものである.
Part 2は,厚生労働省「難治性血管炎に関する調査研究班(研究代表者:有村義宏)」「難治性腎疾患に関する調査研究班(研究代表者:丸山彰一)」「びまん性肺疾患に関する調査研究班(研究代表者:本間 栄)」の3班合同で作成した.AAVの概念,疫学,病因,病態,診断,治療など最新の知見を含めわかりやすく記載してある.
AAVはいまだ難病であり,その予後改善や生活の質(QOL)向上には,疾患についての知識を深め,早期に発見し,より適切に治療することが重要である.本診療ガイドラインがAAV診療の一助になることを期待する.
2017年1月
厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班
有村義宏
厚生労働省難治性腎疾患に関する調査研究班
丸山彰一
厚生労働省びまん性肺疾患に関する調査研究班
本間 栄