2639災害時子ども支援ハンドブック「子どものこころの応急手当」
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心理的応急処置(PFA)は,被災者の精神的苦痛を軽減し,その人がもつ潜在能力に働きかけるような,安全で配慮ある支援方法として,多くの人道支援現場で活用されています.2011 年に世界保健機関(WHO)らが制作した PFA マニュアルは,PFA を「深刻なストレス状況にさらされた人々への人道的,支持的かつ実際に役立つ援助」と定義しています 5).この PFA マニュアルをもとに,より子どもと保護者支援に特化した「子どものためのPFA」研修マニュアルが 2013 年に発行されました 6).研修では,子どもの認知発達段階別の特徴・特性,一般的に示すストレス反応や行動,そしてストレスを抱えた子どもとのコミュニケーションの取り方,親や保護者に対する支援について学べるようになっています.PFA は,専門家が行う精神医療や心理カウンセリングではありません.災害ボランティア,子どもの親や保護者,保育士,教師など,研修を受ければすべての支援者が実施できるものです.もちろん,被災地では医師などの専門家が,衣・食・住などの基本的支援や安全に関する支援に携わることも十分にありえます.したがって,専門家を含むすべての支援者がPFA を知り,相互に連携・協力することが,被災者の心理社会的ウェルビーイングの向上・改善に寄与することになります.Cha pter 3災害時の子どもへの支援110「子どものための PFA」には次のようなことが含まれます子どもや家族に対して……・おしつけがましくない,実際に役立つケアや支援を提供すること・ニーズや心配事を確認すること・衣・食・住など,基本的にニーズの援助をすること・無理強いせず,安心して落ち着けるようにサポートすること・情報や公共サービス,社会的支援へつなぐこと・さらなる危害から保護すること「子どものための PFA」とは,このようなものではありません・専門家にしかできないものではありません・専門的が行うカウンセリングではありません・「心理的ディブリーフィング」ではありません(つらい出来事について,詳しく話していくものではない)・何が起こったのかを分析させたり,起きたことを時系列に並べさせたりするものではありません・子どもの感情や反応を無理に聞き出すことではありません・被災者が語るのを聞くことはあっても,感情や反応を聞き出すものではありません図 3 子どものための PFA とは〔Save the Children on behalf of the Child Protection initiative: Psychological First Aid for Child Practitioners, Denmark, 2013[訳:(公社)セーブ・ザ・チルドレ ン・ ジ ャ パ ン「 子 ど も の た め の 心 理 的 応 急 処 置 ―Psychological First Aid for Children (PFA for Children)」(子どものための PFA, 2016 )]〕

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