株式会社 診断と治療社

診断と治療 最新号

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雑誌「診断と治療」2022年 Vol.110 No.4 知っておきたい血栓予防療法のエッセンス

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掲載論文

ねらい  森田啓行

◆血栓形成の病態生理と抗血栓薬
血栓形成制御における最近のトピックス  堀内久徳
動脈血栓と静脈血栓  大森 司
抗血小板薬の作用機序と使い方  夏秋政浩,他
経口抗凝固薬の作用機序と使い方  後藤信哉
へパリンの作用機序と使い方  森永將裕,他

◆各種血栓予防療法
下肢・骨盤内静脈血栓症の治療  荻原義人
肺血栓塞栓症予防  重歳正尚,他
心房内血栓予防  天木 誠
非弁膜症性心房細動患者における心房内血栓予防  有田卓人,他
心室内血栓予防  藤野雅史,他
人工弁置換術後の抗凝固療法  中井秀和,他
TAVI後の血栓予防  阿佐美匡彦,他
冠動脈血栓予防  松田 剛,他
脳血管血栓予防  杉森 宏,他
下肢動脈血栓症予防  榛沢和彦

◆抗血栓薬の調整による出血副作用のコントロール
術前の抗血栓薬休薬  藤川貴久
消化器内視鏡診療時の抗血栓薬休薬  柴田寛幸,他
抗血栓薬の3剤併用を回避する  中川義久

連 載
◎心電図は1枚の窓
初発心不全の際に持続性頻脈を呈した44歳女性  中村玲奈
◎注目の新薬
フォシーガ®(ダパグリフロジン)  深水 圭

臨床例
腫瘍崩壊症候群を合併した混合型小細胞癌の1剖検例  川口裕子,他

ねらい

 血栓の発生・再発予防,血栓塞栓症の発症予防,人工弁や冠動脈ステントの治療効果の維持など,心血管疾患診療の様々な局面で抗血栓療法が必要であり,現行の各診療ガイドラインには各病態における抗血栓療法に関して詳細に言及されている.循環器科診療に限らず一般の内科診療においてもアスピリンやワルファリンなど抗血栓薬を内服している症例は多いことから,一般内科医にも抗血栓療法に関する正確な知識が求められる.
 抗血栓薬は,アスピリンなどの抗血小板薬と,ワルファリン・直接経口抗凝固薬(DOAC)などの抗凝固薬に大別されるが,各病態においてどのような使い分けをすべきなのか? ワルファリン用量調節時のPT—INR目標値は? 非弁膜症性心房細動患者におけるCHA2DS2—VASc スコア算出とそれに引き続くDOAC選択はどのようにすればよいのか? 生体弁による人工弁置換術後のワルファリン投与期間は? 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)後の抗血栓療法に関するコンセンサスは? など,抗血栓療法のdecision—makingに際しては多くの知識が必要である.
 また,実際に抗血栓療法を行う際には,出血リスクを最小限に抑えることを常に意識しなくてはならない.例えば,冠動脈ステント留置術後の抗血小板薬2剤併用(DAPT)はどのくらいの期間継続すべきか? これまでに多くの大規模臨床試験が行われ,各診療ガイドラインにも推奨継続期間が記載されている.外科手術や消化管ポリペクトミーに先立ち,抗血栓薬内服はいつから休薬すればよいのか? 薬剤によってそれぞれ異なる休薬期間が推奨されている.また,冠動脈ステント留置術後の抗血小板薬2剤併用 (DAPT)と非弁膜症性心房細動などに対する抗凝固薬1剤の併用,すなわち抗血栓薬3剤併用は出血リスクが大きい.2剤併用へと切り替えることにより3剤併用時に比して血栓予防効果をほとんど減弱させることなく出血リスクを抑えることができる.このようにリアルワールドでは血栓予防効果と出血リスクとのトレードオフを考慮した,最善の抗血栓療法選択が求められている.
 本特集「知っておきたい血栓予防療法のエッセンス」では,各領域における血栓予防の考え方,最新知識と現在の問題点に関して,エキスパートの先生方にわかりやすくご解説いただいた.本特集を通読いただき,抗血小板療法と抗凝固療法の使い分け,各領域における抗血栓療法の実際,出血リスクとのトレードオフを十分考慮した抗血栓療法の選択に関してさらに理解を深めていただき,日常診療における実際の抗血栓療法にお役立ていただければ幸いである.

東京大学大学院医学系研究科循環器内科学講座
森田啓行
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