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産科と婦人科 最新号

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雑誌「産科と婦人科」2022年 Vol.89 No.6 HPVワクチンのこれまでとこれから

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掲載論文

企画 宮城悦子

Ⅰ.HPVワクチンをめぐるこれまでの経緯
 1 .開発から実用化までの経緯 / 笹川寿之・他
 2 .HPVワクチンの日本での歴史的経緯 / 宮城悦子
 3 .HPVワクチンの接種勧奨差し控えによって日本の女性に生じた不利益 / 八木麻未・他
Ⅱ.海外の動向
 4 .Real worldにおけるHPVワクチンによる子宮頸がん減少のエビデンス / 川名 敬
 5 .海外のHPVワクチン接種プログラムの状況―9価HPVワクチン,2回接種など― / 今野 良
 6 .低中所得国における子宮頸がん予防 / 春山 怜・他
 7 .世界保健機関が提唱する子宮頸がん排除を加速するための世界戦略 / 藤田則子・他
Ⅲ.日本の動向と今後の課題
 8 .HPVワクチン有効性のエビデンス―1)新潟スタディ / 工藤梨沙・他
 9 .HPVワクチン有効性のエビデンス―2)全国自治体症例対照研究(J‒Study) / 池田さやか・他
10.HPVワクチン有効性のエビデンス―3)日本対がん協会支部の検診「リアルワールドデータ」の活用 / 小西 宏
11.HPVワクチン接種後に生じた多様な症状に関する全国疫学調査(祖父江班調査) / 福島若葉・他
12.HPVワクチン接種後の機能性身体症状が疑われる若者への対応 / 奥山伸彦
13.HPVワクチンが高い接種率を回復するためのストラテジー / 鈴木幸雄
14.小児科医の立場からみたHPVワクチン定期接種正常化への課題 / 森内浩幸

症 例
急速に進行したIA期子宮体部異所性がん肉腫の1例 / 海平俊太郎・他
同側卵巣から発生した3種類の良性腫瘍に対し腹腔鏡下手術を施行した1例 / 細川雅代・他

ねらい

 HPVワクチンをめぐり,2013年6月に厚生労働省から定期接種の積極的勧奨差し控えが通知されて以後,定期接種がほぼ止まったままの状況が約9年続いていたが,2021年11月12日の厚生労働省の専門部会において,積極的勧奨差し控えの中止が正式に決定された.
 この決定に至る前,2019年12月に,定期接種ワクチン接種が止まっている現状について,総理大臣の答弁書に「勧奨の具体的な方法は市町村長に一定の裁量があるが,予防接種法の趣旨を踏まえて勧奨を実施する必要がある」と記されたことから,2020年10月と2021年1月に,厚生労働省健康局健康課より,HPVワクチンについて,検討・判断するためのワクチンの有効性・安全性に関する情報等や,希望した場合の円滑な接種のために必要な情報等を対象者に告知することを目的とした通達があり,この効果で,HPVワクチン接種はほぼゼロから10%程度に上昇したとされている.また2020年7月には,9価HPVワクチンがほかの先進国よりかなり遅れてわが国でも承認された.そのような中,「がん教育推進のための教材」(文部科学省,2021年3月改訂)で,ウイルスが関係しているがんがあり,感染予防ワクチンがあることが紹介され,HPVワクチンに関する記載も実現した.このことは,未来のワクチン接種対象者に対する教育効果だけではなく,性教育現場で,HPVやB型肝炎ウイルス感染が性交渉で起こることを取り上げやすくなるという大きな影響があると考えられる.
 多くの先進国は,HPVワクチン接種の啓発と普及を強く推し進め,男女の区別のないHPVワクチン接種や9価HPVワクチン接種の普及,若年者への2回接種へのワクチンプログラム変更などを粛々と進めている.またHPVワクチン効果による浸潤子宮頸がん減少がスウェーデン,デンマーク,イングランドの疫学研究として示された.日本は国際的な流れから大きく遅れをとることになってしまった.
 本特集が,HPVワクチンに関する歴史と現状,効果と安全性,そして今後の日本での普及の鍵についても明確となることを期待する.そして,現時点での有害事象対策も含めたバイブルとなることを願う.

(横浜市立大学医学部産婦人科学教室 宮城悦子)
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