2420CBRNEテロ・災害対処ポケットブック
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2 化学剤50□ CHEMMによる化学剤の推定 Chemical Hazards Emergency Medical Management(CHEMM)のホームページは,米国の国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH),保健福祉省 (Department of Health and Human Services:HHS) によって提供されている. 国立医学図書館(National Library of Medicine:NLM)や国防省などの専門家が科学的根拠(evidence based medicine:EBM)を基に作成している. CHEMMのホームページは,誰でもアクセスしダウンロード可能で利用することができる(http://chemm.nlm.nih.gov/index.htm).現場での初動対応要員,病院対応者や対処計画作成者向けに,検知・トリアージ・除染・治療などについて詳細に記載されている.最大の特徴は,17項目の症状・徴候から瞬時・容易に7化学剤の推定が可能なCHEMM Intelligent Syndrome Tool(CHEMM-IST)(https://chemm.nlm.nih.gov/chemmist.htm)である.1)CHEMM-ISTの概要(図3) ①初動対応要員は基礎的な救急医学的評価トレーニングによって,重要項目(徴候・症状)の入力から容易に化学剤の推定が可能である.②症例研究を通して幅広い利用者によって完全にテスト/評価されており,病院の初期診療スタッフだけでなく一次救命措置(BLS)や二次救命措置(ALS)指導者の利用をも目的としている.③CHEMM-ISTの対象は重症例,または化学剤を吸入した症例であり,皮膚に付着した症例(びらん剤など)は想定していない.④CHEMM-ISTは現在開発中の第2フェーズの診断推定ツールであり,現時点では患者の治療には慎重に使用すべきである. ⑤CHEMM-ISTは現在,❶ノックダウン症候群(シアン化合物/青酸),❷殺虫剤症候群(有機リン系殺虫剤・神経剤),❸溶剤・麻酔・鎮静剤(SAS)症候群(シンナー/トルエン),❹刺激ガス症候群(アンモニア,塩素,ホスゲン),❺オピオイド症候群(フェンタニル),❻抗コリン作動性症候群(3ーキヌクリジルベンジラート),❼痙攣剤症候群(ヒドラジン/ピクロトキシン)の7化学剤の症候群が推定可能である.

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