4 核・放射線146⑥薬剤を使用し吐き気や嘔吐がなくなり,短期的に十分な身体能力を維持できれば,被ばく後の外傷性障害を減らすことができる.⑦予防的制吐薬は被ばくによる傷害を軽減することはなく,放射線防護効果ももたない.放射線被ばくの指標としての,吐き気および嘔吐の信頼性を失わせることにもなる.□潜伏期①前駆期から回復した後の被ばく者は,比較的症状がない状態になる.②この期間の長さは線量によって異なり,他の疾患または傷害があるかどうかによっても変わってくる.③造血器障害である骨髄抑制(貧血,白血球減少)が出現するまでの潜伏期が最も長く,その期間は2〜6週間と幅がある.④消化管障害(嘔吐,腹痛,下痢)発生までの潜伏期は,やや短く数日から1週間である.⑤最も短いのは神経血管系症候群(低血圧,頭痛,眩暈)が表れるまでの潜伏期で,数時間にすぎない.⑥潜伏期間は極めてばらつきが大きく,放射線障害者全員を潜伏期の早期に入院させることは現実的でない. 図8 1 Gy以上被ばくした場合の急性放射線症候群の出現時期早く出現するほど被ばく線量は高い6時間を経て症状がなければ被ばく線量は1 Gy以下と推定時間経過リンパ球数減少被ばく前駆症状嘔吐,疲労感(発症期)急性放射線症候群骨髄,腸管,心血管・神経障害30分〜 6時間>1 Gy2日〜3週間潜伏期
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