1474核・放射線□発症期①傷害を受けた主な臓器(骨髄,腸管,神経血管系)の臨床症状が現れる.②出血と貧血,感染に対する抵抗力低下という深刻な問題が,発生するまでの平均期間は2〜3週間である.③致命的になりうる骨髄抑制でさえ,被ばくから6週間後まで発生しないこともある.2)慢性および間欠的な被ばく症候群 ①3年以上にわたって放射線に被ばくし,かつ骨髄に1 Gy以上の照射を受け続けると,慢性放射線症候群(chronic radiation syndrome:CRS)を発症することがある(表9).②臨床症状は多岐にわたり,睡眠障害や食欲障害,全身の脱力感と易疲労性,興奮性亢進,意識喪失,記憶障害,気分の変化,眩暈,運動失調症,感覚異常,頭痛,鼻出血,悪寒,失神発作,骨痛,ほてりなどがある.③重症になると,貧血,消化管粘膜の萎縮性変化,脳脊髄炎,免疫抑制に起因する感染症の合併が認められる. 表9 慢性放射線症候群全身症状消化器症状皮膚症状血液検査頭痛食欲不振熱傷(I度,II度,III度)リンパ球減少疲労吐き気脱毛好中球減少脱力感嘔吐潰瘍形成血小板減少日和見感染下痢紫斑3)血液検査所見から全身被ばく線量を推定(表10) ①一般検査では,血液のリンパ球数と好中球数の変動が早期に出現する.②被ばく後24〜48時間でリンパ球数は低下し,血清アミラーゼはピークに達する.③線量の正確な評価のためには,末梢血リンパ球の染色体異常(二動原体など)を調べる.④末梢血リンパ球による染色体分析は,生物学的被ばく線量評価法として広く使われている.⑤染色体異常分析は信頼性が高く,0.1〜9 Gyの範囲で吸収線量をよく反映する.⑥10〜15 mLの血液をヘパリン入り試験管に無菌的に採取,冷蔵保存し,専門施設に送付し,正確な被ばく線量を評価する.
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