1836中毒③原因物質の推定と同定.・中毒は,早期診断,早期治療が重要である.・中毒起因物質には,拮抗剤,解毒剤が存在するものがあり,中毒起因物質の組成の確定や情報の収集が特に重要になる.・場合によっては,症状,情報から原因物質を推定して,確定する前に治療を開始することが重要である.・原因物質が不明な段階で,症状の組み合わせから,どのようなカテゴリーの中毒起因物質か推定することをトキシドロームとよぶ.・トキシドロームは,傷病者収容先の医療機関同士が情報を共有することにより,さらに精度が増す.・代表的なトキシドロームを表1に示す.トキシドロームにより,早期の治療開始が可能となる.□ 化学剤・中毒起因物質の検索ツール①Wireless Information System for Emergency Responders(WISER)(https://wiser.nlm.nih.gov/index.html)は,米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部門である国立医学図書館(National Library of Medicine:NLM)が開発した,危険物の事故発生時に救急対応を支援するための情報システムである(図1).②インターネット上オンラインで使用が可能で,パソコン,iPhone,iPod touch,Androidにダウンロードしオフラインで利用することもできる.③未知物質を性状や症状等から絞り込むツールのほか,化学物質の特性,毒性,中毒症状,一般・救急治療法,環境影響など様々な情報を得ることができる.④WISERにChemical Hazards Emergency Medical Management(CHEMM)(50ページ参照)が統合され,WISERの影響力でCHEMMへの幅広い認知がなされている.⑤海外では工場管理者や消防職員などによる化学物質の毒性把握だけでなく,CBRNE災害の現場でもすでに活用されている.□診察・救急処置1)救急救命処置 一般の救急処置と同様,A(気道),B(呼吸),C(循環)の確保を優先するが,解毒剤・拮抗剤のある場合は,Drug(薬剤)を優先し,DABCの順になるこ
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