2502子どもの心理発達の臨床
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5Unit 1-2 子ども特有の心理学上の配慮事項──運動発達・認知発達と心理発達にかかわるUnit 1 心理発達の基本を探るUnitUnit4治療的介入についてUnit3心理発達課題からの逸脱で何が起こるかUnit1心理発達の基本を探るUnit2定型発達の心理発達課題子ども特有の心理学上の配慮事項──運動発達・認知発達と心理発達にかかわる1-2 成人でも身体的側面が心理状態に影響する.たとえば,老化がそのよい例だろう.しかし,子どもの場合は成人よりはるかに影響が大きい.運動発達によって,行動に大きく影響が及ぶからだ. 痙性両麻痺(下肢に麻痺があって,お座りが遅れたり,立ったり歩いたりが遅れる)の患児では,リハビリテーションが進んで,手の自由が利き,歩行可能になると,言語発達が促進されるのは,(筆者を含めて)小児神経科医の,誰もが経験していることだろう.具体的な理由と症例は,後節で示す(→Unit 2-5). 同様に,映像メディアの問題(→Unit 3-4)が著しいと,粗大運動能力や協調運動能力が育たず,言語発達や対人関係,ひいては実行能力に多大な影響を及ぼす. 知的発達症(知的能力障害)があれば,心理発達が知的水準相応になることは,小児科医なら誰でも経験しているであろう.したがって,IQが50であれば,Unit 2で説明する各種の心理発達課題(危機)がやってくるのは,思春期を除けば,定型発達の2倍の年齢となる. 子どもの認知発達が心理発達に影響することを明確に示したのは,Piaget Jである.Piagetの考え方をよく示しているのは次のことばである. 大人からみると理解しがたい子どもの行動が,実は「子どもなりに秩序と論理をもった考え方」によって生じていると考える.子どもの行動の理解のために,子どもの認知発達の基本的な仕組みを次の概念によって説明した.運動発達が心理発達に影響する1認知発達が心理発達に影響する2子どもは,実験を繰り返す小さな科学者である① schema(シェマ,認知構造)の獲得:情報処理の枠組みを得る.② assimilation(同化):新たな情報を既存のschemaで処理する.③  accommodation(調節):新たな情報を既存のschemaで処理できないとき,認知のやり方を変える.④  equilibration(均衡化):assimilationとaccommodationによって認識精度を高める.

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