2502子どもの心理発達の臨床
4/8

6Unit 1 心理発達の基本を探る assimilationとaccommodationにより,equilibrationを進め,schemaの質を高めることが認知の発達である.すなわち,「新たに知ったこと」を「すでに知っていること」と比較して,より正しい認識を得ることが認知発達である. たとえば,赤ちゃんの「口に入れる」という行為を例にとると,次のように説明できる. 子どもの思考は大人と異なっており,Piagetは誕生から青年期までを,次の4つの時期に分けた.外界を認識するschemaの質的変化により,認知機能が下記の4つの段階を経て発達すると考えた.sensori-motor stage(感覚運動段階) 子ども自身の感覚と運動を通して対象とかかわることによって,schemaを獲得する時期で,おおむね誕生から2歳頃という. 乳児はいろいろなものに何度も触って認識しようとする.これを循環反応(circular response)とよぶ.循環反応自体も,なめる・吸うといった単純な行動の繰り返しに始まり,行為自体の反復によって生まれる結果にも興味をもつようになる.さらには,行為の違いによる結果の変化や反応の一致にも興味をもつ.乳幼児が積木を積んでは壊しを繰り返すのは,循環反応の例といえる. この時期に獲得する代表的なschemaには,対象物の永続性の理解,表象機能の獲得があげられる.対象物の永続性を例にとると,おおむね1歳頃の子どもは「いない・いない・ばあっ」を喜ぶ.しかし,3歳以降(大人を含む)では,「いない・いない・ばあっ」を楽しむことはない.これは対象物の永続性のschemaがこの時期に構築されるからだという.顔が視界から隠れて再び出現する現象が,対象物の永続性を理解していない,この時期の子どもにとっては,摩訶不思議な現象で知的好奇心をそそるのだという.これに対して,対象物の永続性のschemaが完成された3歳以降(大人を含む)では,当たり前の現象であり興味を引くことはないと考える. 表象機能とは目の前にはないものを思い浮かべることで,最初は自分に相対した相手の動作や発生をすぐにまねることに始まり,次第に相手の動作を記憶してあとでまねること(延滞模倣)が可能となる.この機能は1歳半ぐらいから芽生え,3歳以降で本格化する.preoperational stage(前操作期) 具体的な操作を学ぶ時期で,おおむね2〜7歳頃である.2〜4歳頃の象徴的思考期(symbolic function substage)と4〜7歳頃の直観的思考期(intuitive thought substage)に分けられる.① おっぱいを口に入れたら母乳が飲めて,満腹になった【schemaの獲得】.② 離乳食を口に入れたら,満腹になった【assimilation】.③ 指を口に入れてみたが何も飲めず,空腹のままだった【accommodation】.④ 空腹時にはおっぱいや離乳食を口にし,指を口に入れなくなる【equilibration】.Piaget's theory of cognitive development(認知発達段階説)312

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る