2502子どもの心理発達の臨床
5/8

42Unit 2 定形発達の心理発達課題Unit 2 定型発達の心理発達課題Unit1歳児の課題「しつけの基本」──「イヤイヤ期」到来を喜ぼう2-4 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法の対人関係の項目をみると,1歳0か月で90%の子どもが可能なこととして「父や母の後追いをする」,1歳2か月で「ほめられると同じ動作を繰り返す」,1歳4か月で「簡単な手伝いをする」,1歳6か月で「困難なことに出会うと助けを求める」ようになる. 言語理解でも,1歳2か月で「おいで,ちょうだい,ねんね」のすべての要求を理解し,1歳4か月で簡単な命令を実行できるようになる. これらは,アタッチメント―人を無条件に信用する能力を,アタッチメント対象(母親)に対して獲得した結果といえる.よって,アタッチメント対象のいうことを聞けるようになるのだ.1歳児の課題である「しつけの基本」とは,信頼している大人にいわれたら従うこと,といえる.少し乱暴ないい方をすれば,信頼している大人にいわれたらあきらめて行動することといってもよいだろう.心理発達には順序がある(→Unit 1-1)ことから,アタッチメント対象を獲得できなければ,この課題を習得するのは困難である. 1歳児の課題「しつけの基本」の習得にあたって保護者が困るのは「イヤイヤ期」である.「イヤイヤ期」は1歳半頃にはじまり,3〜6か月続く. 子どもの心理発達は大人と異なり,身体発達や認知発達に影響される.1歳半の「イヤイヤ期」は,言語の習得過程によって起こる現象といえる. 教育目標分類学によって示されるように,認知発達は,暗記・模倣(想起)に始まり,内容理解(解釈),応用(問題解決)へと進む(→ 『発達障害の臨床』Unit 1-9). 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法によれば,3語いえるのは1歳4か月である.その後急激にことばが増えていくが,「いや」を習得するのが,1歳半ぐらいからになる.教育目標分類学が示すように,最初は暗記・模倣であり,内容を理解できていない.「いや(ジェスチャーを含む)」が「否定・拒否」であるということを,子どもが理解できていないのだ. ところが,周囲の大人は,子どもに「いや」といわれれば,「否定・拒否」の意味と解釈して,反応するだろう.バナナをあげて「いや」といわれれば,りんごをあげ,また「いや」といわれれば,みかんを差し出すことだろう.子どもは「否定・拒否」の意味を理解していないので,さらに「いやいや」を続けたあげく,泣き出したり,最初にあげたバナナを1歳児の課題「しつけの基本」とその成果11歳半頃の「イヤイヤ期」とアタッチメント2

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る