2502子どもの心理発達の臨床
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73Unit 3-3 アタッチメント症: Zeanahの提唱による──RAD/DSEDの周辺にいる子どもたちUnit4治療的介入についてUnit3心理発達課題からの逸脱で何が起こるかUnit1心理発達の基本を探るUnit2定型発達の心理発達課題 アタッチメント症(attachment disorder)とは,Zeanahらによって提唱された概念である.筆者の理解では,Zeanahらによるアタッチメント症とは,反応性アタッチメント / 脱抑制型対人交流症(RAD/DSED)の診断基準をもう一歩のところで満たしていない子どもたちの総称である. たとえば,アタッチメント症の診断基準には,RAD/DSEDの診断基準に存在する「極端に不十分な養育環境」(→ Unit 3-1,3-2の診断基準のC)が存在しない.よって,アタッチメント症の概念は,RAD/DSEDよりも広い集団を指し示しており,日本における不適切な養育―たとえば,映像メディアによる子育てによって起こる行動異常(→ Unit 3-4)―は,アタッチメント症の診断基準を満たすが,RAD/DSEDの診断基準を満たしているとはいえない.映像メディアによる子育てが,「保護者によって与えられるはずの,快適で愛情のある働きかけを望む当たり前の情動を与えられず,持続的に社会的ネグレクト・欠落の状態にある(social neglect or deprivation in the form of persistent lack…)」とまではいえないからである. 「アタッチメント症:選択的なアタッチメント対象がない」は,どちらかといえば,RAD類似パターンといえる.よって,行動異常は自閉スペクトラム症に似ているところがある.Zeanahらによる暫定的な診断基準の筆者による意訳を表1に掲載した. 「アタッチメント症:選択的なアタッチメント対象がない」とは,0歳児の課題「アタッチメント:人を無条件に信用する能力」(→ Unit 2-2)の習得に必要な,“無条件に信用する対象(母親)”が存在しない状態といえる.本人の気質と相まって,人を求めない行動が当たり前の行動となってしまった状況を指し示している. Unit 2-3にあげた事例(CASE 4)は,「アタッチメント症:選択的なアタッチメント対象がない」と診断できる.概要1アタッチメント症:選択的なアタッチメント対象がない(attachment disorder, no discriminated attachment figure)2Unit 3 心理発達課題からの逸脱で何が起こるかUnitアタッチメント症: Zeanahの提唱による──RAD/DSEDの周辺にいる子どもたち3-3

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