90Unit 3 心理発達課題からの逸脱で何が起こるか 適応反応症(適応障害)とは,DSM-5-TRでは心的外傷およびストレス因関連症群に属する.ストレス因に反応して,3か月以内に情動面and/or行動面に症状が出現し,ストレス因がなくなると症状が6か月以内に消失するものを適応反応症という.不登校は,ストレス因がなくなっても6か月以内に消失しないことが多いことから,DSM-5-TRの定義における適応反応症ではない.不登校は,他の特定される心的外傷およびストレス因関連症に分類され,類適応反応症とよばれている.本書ではこれらの問題をまとめて,「不適応」とよぶことにしたい. 学校不適応対策調査研究協力者会議(平成4年)は,不登校を下記のように定義している. 文部科学省による学校基本調査では,「不登校」で30日以上欠席した児童生徒を調査して統計学的事実を公表している.適応指導教室などで指導を受けている場合やICTなどを活用した学習活動を,指導要録上出席扱いとしていることがある.保健室に登校している場合も,欠席ではないので,先の調査では数に含まれない.以下,本書では,保健室登校のような「不登校」の傾向を示す場合も,不登校として取り扱う. 文部科学省による学校基本調査では,表1のように不登校の要因を類別している.いじめをはじめとした,様々な要因があげられているが,これらは心理的介入を行う場合に大切な要因ではない(図1).たとえば,「いじめ」にあったときに,やり返すという選択肢(防衛機制では「取り入れ」)をとる子どももいるだろうし,相手をしないという選択肢(「抑圧 / 否認」)をとる場合もあるだろう.先生に相談する場合(「補償」)もあるだろう.各種の選択肢のなかから,不登校という選択肢(「逃避」)をとる場合も当然あり得るが,不登校という選択肢不登校と適応反応症1不登校の定義2何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし,病気や経済的な理由によるものを除く)をいう.不登校の要因3Unit 3 心理発達課題からの逸脱で何が起こるかUnit不登校と適応反応症──誘因と原因を区別する3-7
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