❶治療戦略を再確認するマイクロカテーテルが瘤内で不安定な状態=マイクロカテーテルの操作のみでは,動脈瘤塞栓に必要なコイルが充填できない状態といえる.動脈瘤治療が急速にマルチデバイス時代になりつつある現在では,動脈瘤のtight packingだけが治療の目標ではなく,動脈瘤の部位・形状によっては,仮にdome fillingに終わっても,フローダイバーターを併用して瘤の根治を図ることも可能である.症例に応じて,短期的(短期での破裂・再破裂),長期的なリスク(再発増大)を考慮し,治療リスクの最小化と効果の最大化を両立させる必要がある.当然術前に十分な検討,インフォームドコンセントがされるべきであるが,術中所見によって治療戦略や,以下の方法を柔軟に再検討すべきである.❷カテーテルの形状を変更するマイクロカテーテルの操作のみでコイルを狙いどおりに瘤内で分布させるためには,ネック中央から塞栓を行いたい動脈瘤の軸に近い角度で,マイクロカテーテルが瘤内に収まる必要がある.かつコイル挿入時のキックバックを受け止めるために,動脈瘤と反対側の母血管壁がカテーテルの支点となる形状を作れれば,安定した塞栓が可能となる.❸ダブルカテーテル法を用いる本症例のような2コブ状の動脈瘤の場合に,先端形状の異なる2本のマイクロカテーテルをそれぞれの成分に誘導し,コイルを絡めながら,あるいは互いのコイル,カテーテルを物理的障壁としながら塞栓を行う方法である.本法の欠点は,術中破裂に対応するためにはバルーン付きガイディングカテーテルが必要となること,中間カテーテルが使用しづらいこと,術者以外に1名熟達した助手が必要であることなどがあげられる.❹バルーンアシストで塞栓するネックからのコイルの逸脱を防ぐ目的で行う通常のバルーンアシストも有効であるが,マイクロカテーテルが固定され,コイルもほぼ1か所からしか分布しないため,コイル塞栓が難しくなり,穿孔リスクが高くなるといった欠点がある.バルーンカテーテルをネックの遠位で拡張することで,マイクロカテーテルの瘤内への進入軸を変えたり,バルーンをマイクロカテーテルの支点とする方法も有効な場合がある.❺ステントアシストで塞栓するステントを先に展開し,マイクロカテーテルをjailingすれば,強いマイクロカテーテルの固定とコイル逸脱防止効果が得られる.欠点は,バルーンアシストと同じく,カテーテルが固定され細かなポジショニングが難しくなるため,コイル分布や,どの程度まで塞栓を行えるかの予測がやや難しいことである.Trans-cellでの追加塞栓も可能であるが,経験的には数多くのコイルの追加は困難である.また,再発時の治療選択肢が限られることもデメリットである.54トラブルシューティング法トラブルシューティング法
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