2561不随意運動の診断と治療 改訂第3版
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 前版の改訂以降,電気生理学的バイオマーカー,イントロンの遺伝子異常の解明,JLA法に代わる新しい手法,皮質ミオクローヌスに著効する薬剤の上市など,多くの新知見がある.(動画Part 8参照)定  義1 ミオクローヌス(myoclonus)という用語は,1881年Friedreichが用いたparamyoclonus multi-plexという名称が短縮されたものと考えられている.現在,ミオクローヌスは“中枢神経系の機能異常による突然の,電撃的な,四肢・顔面・体幹などに生じる,意識消失を伴わない不随意運動”と定義される1). 刺激で誘発されることもあり,また周期性や律動性を示すこともある.変性疾患,脳血管障害,脳炎,脳腫瘍,てんかん性疾患,薬物中毒など様々な病因で生じる. 筋肉が不随意に収縮することで生じるものを陽性ミオクローヌス,筋収縮が不随意に停止して生じるものを陰性ミオクローヌスという. 陽性と陰性の双方のミオクローヌスが混在することもある.病  因2 ミオクローヌスは様々な疾患で認められる2)(表1).原因となる遺伝子は最近かなり解明されてきた(表2).また,種々の薬剤の副作用や各種中毒症でも生じる3)(表3).分  類3 ミオクローヌスの分類には,出現する身体の部位と範囲,各部位での同期性,脳波異常との関係,刺激に対する反応性,出現の規則性,病因など様々な分類があるが,病態生理による分類が比較的よく用いられる(表4). 大脳皮質の異常によるものは皮質性ミオクローヌス,基底核や脳幹部などの異常によるものを皮質下性ミオクローヌス,脊髄由来のものを脊髄性ミオクローヌスと分類する. 実際には,皮質性ミオクローヌスと皮質下性ミオクローヌスは共存することが多い. また,器質性の疾患を伴わない心因性ミオクローヌスも存在する4).皮質性ミオクローヌスa 大脳皮質一次感覚運動野の神経細胞の異常により生じる.非常に持続時間の短い,不規則な筋収縮で,姿勢時や運動時に出現しやすく,しばしば刺激過敏性を認める.“てんかん性ミオクローヌス”と病態生理的に考えられ,てんかん発作を伴うものも多い. 皮質性ミオクローヌスはさらに3種類の亜型に分類される.刺激過敏性があり,体性感覚,聴覚,視覚刺激などで誘発される場合は皮質反射性ミオクローヌス,刺激に無関係に自発的に生じているものを自発性皮質性ミオクローヌス,自発性であっても,身体の一部に限局し,持続性にミオクローヌスが生じている場合には,持続性部分てんかん発作と分類している. 皮質性ミオクローヌスをきたす疾患としては,170ミオクローヌス第10章

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