欄外註:ミオクローヌス(myoclonus英語,myoklonus独語,myoclonies仏語)とミオクロニー発作(myoclonic seizure)の違い:“ミオクロニー発作”は,てんかん発作としての表現であり,通常両側あるいは全般性の四肢に1〜2秒間以内の連続した筋収縮であり,1〜2秒間の意識減損を伴うこともあり,単発のこともある.これが極めて断片化して出現したものが皮質性ミオクローヌスに相当し,そのために皮質性ミオクローヌスはてんかん性ミオクローヌスとも呼ばれる.ミオクローヌスは運動異常症の立場からの用語,ミオクロニー発作はてんかん学の立場からの用語ともいえよう.また,疾患名としては,“ミオクローヌスてんかん(myoclonus epilepsy)”と“ミオクロニーてんかん(myoclonic epilepsy)”が使用され,以下のような使い分けが記載されている.“ミオクローヌスてんかん”はおもに“不随意運動としてのミオクローヌス”を有する“てんかん症候群”を示唆する.一方,“ミオクロニーてんかん”は発作性に出現する“ミオクロニー発作”はあるが,常時診察中に不随意運動としての“ミオクローヌス”はなく,JME(若年ミオクロニーてんかん)や小児科領域の各種ミオクロニーてんかんなどがそれに相当する5,6).表1ミオクローヌスの病因1 生理的ミオクローヌス睡眠時ミオクローヌス不安誘発性ミオクローヌス運動誘発性ミオクローヌス吃逆2 本態性ミオクローヌス家族性本態性ミオクローヌス孤発性本態性ミオクローヌス3 てんかんに合併するミオクローヌスてんかん発作の部分症状 孤発性のてんかん性ミオクローヌス,持続性部分てんかん,特発性刺激過敏性ミオクローヌス,光過敏性ミオクローヌス,ミオクローヌス性欠神発作小児発症のミオクローヌスてんかん 点頭てんかん,Lennox-Gastaut症候群,小発作,潜因性ミオクローヌスてんかん,若年性ミオクローヌスてんかん良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん進行性ミオクローヌスてんかん(蓄積症を除く) Unverricht-Lundborg病,ミトコンドリア脳筋症4 症候性ミオクローヌス各種蓄積症に伴うミオクローヌス Lafora病,リピドーシス,セロイドリポフスチノーシス,シアリドーシス小脳失調に伴うミオクローヌス Friedreich運動失調症,Louis-Bar症候群,脊髄小脳変性症基底核変性に伴うミオクローヌス Wilson病,捻転ジストニア,Hallervorden-Spatz病,進行性核上性麻痺,Huntington病(特に若年性),皮質基底核変性症(大脳皮質基底核症候群)認知症に伴うミオクローヌス Creutzfeldt-Jakob病,Alzheimer病脳炎・脳症に伴うミオクローヌス 亜急性硬化性全脳炎,嗜眠性脳炎,アルボウイルス性脳炎,単純ヘルペス性脳炎,HIV脳症,感染後脳症,Whipple病,Lance-Adams症候群代謝性疾患・全身疾患に伴うミオクローヌス 肝不全,腎不全,透析症候群,低ナトリウム血症,低血糖,非ケトン性高血糖,熱射病,感電,潜水病薬剤性・中毒性脳症に伴うミオクローヌス(表3参照)傍悪性腫瘍症候群に伴うミオクローヌス オプソクローヌス多発ミオクローヌス症候群局所性中枢神経障害に伴うミオクローヌス 脳血管障害,腫瘍,外傷,脊髄外傷5 心因性ミオクローヌス(Marsden CD, Hallett M, Fahn S:The nosology and pathophysiology of myoclonus. In:Marsden CD, Fahn S(eds),Movement Disorders. Butterworth Scientific, London, 1982;196-248.より一部改変)動画Part 8ミオクローヌス(動画8-1〜20)※動画が多いため,Part 8の動画一覧PDFから閲覧ください.171第10章 ミオクローヌス
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