第4章システマティックレビュー比較検討している.ランダム化されておらず治療時期や評価者も異なり,パルス療法の回数も症例で違うというオープン試験で,バイアスリスクは非常に高い.しかし結果は,介入(パルス療法)群11例中10例が寛解となり,14例中6例が寛解となった対照群に比べて有意に寛解率が高かった.また血清CKが正常化するまでの期間は,パルス療法群が6.6±3.6週(mean±SD)であったのに対し,対照群は11.7±5.1週であり,有意差をもってパルス治療開始群が早く正常化できた.問題点が多い報告であるが,慣例的な経口ステロイド治療にステロイドパルス療法を加えてPM/DM治療を開始することは,高率に,そして早く寛解を達成することができると考える.アザチオプリン(azathioprine:AZA)に関しては,PM 31例に対し,1つのRCTとその長期観察の報告があり2)3),PSL 60 mg/日のみ15例(うち1年間の長期投与例8例)を対照(対照群)に,PSL 60 mg/日にAZA 2 mg/kgを併用(介入群,うち長期投与例8例)している.筋力回復は介入群で13例,対照群で10例と介入群でやや有効に認められたが,その例数・変化値には有意差がなかった.同様に,筋原性酵素正常化も介入群で16例,対照群で12例と,介入群でやや有効ではあるものの,その例数や正常化までかかった日数には有意差がなかった.ステロイド減量効果としては,長期観察群のみで検討されており,1年後にPSL 10 mg/日未満であったのが,介入群8例中8例,対照群7例中3例で(有意差なし),かつその内服量平均は1.6 mg/日と8.7 mg/日で有意差を認めた.筋生検所見については,治療前と介入3か月後を比較できた,介入群8例中8例,対照群8例中7例で改善が認められ,その評価スコアにも有意差はなかった.このことより,AZAの併用は,PMの筋炎治療において,ステロイド減量効果は期待できると考えられる.PSL内服加療中のDMまたはPM 30例を,メトトレキサート(methotrexate:MTX)7.5~25 mg/週内服とAZA 50~150 mg内服を併用した15例(介入群)と,MTX 500 mg/cm2隔週静注を行った15例(対照群)に分けて検討したRCTがある4).PSL投与量は,介入開始前と同じ量を介入後1か月は継続することとしている.また,この介入群と対照群は,6か月後に治療をクロススイッチしている.最初の6か月間の治療効果を比較すると,筋力は徒手筋力テスト(manual muscle testing:MMT)スコアと日常生活動作(activities of daily living:ADL)スコアで評価,また筋原性酵素CK変化も評価し,介入群で8例,対照群で4例回復しており,介入群でより回復した症例が多いものの,群間に統計学的有意差はなかった.副作用は,死亡1例を含む重篤なものはクロススイッチ後に発症しており,クロススイッチ前の時期では,非重篤なものが介入群2例,対照群10例で報告され,この発現率には有意差が認められた.このことより,PSL加療中のPM/DMに併用する免疫抑制薬として,MTX点滴静注療法よりも,MTXとAZA内服療法のほうが安全に行えることが示唆される.SRの対象にはならなかったが,抗ARS抗体陽性筋炎症例においては,副腎皮質ステロイドにMTX併用を行った場合,AZA併用を行った場合と遜色のない筋炎治療効果を認めたという症例集積報告5)や,成人炎症性筋疾患症例において,MTX併用療法は,副腎皮質ステロイド単独療法もしくはAZA併用療法と比べて筋炎治療効果が高かったとの後向きコホート研究6)がある.本ガイドライン作成委員会においては,MTX内服療法の併用はAZA内服療法の併用と同様に広く行わ免疫抑制薬119
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