2625専門医に紹介した不思議な発作と神経症状たち
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Chapter 1Case5 81ColumnCase 5 「深夜にリビングで徘徊」の中年女性夜間の行動異常という点では睡眠関連摂食障害(sleep related eating disorder:SRED)も重要な鑑別です10).睡眠中の不完全な覚醒状態により意図せず制御不能な摂食行動を繰り返す病態をさします.典型的には入眠後の深夜に起き上がり,リビングや冷蔵庫にある食物をあさり食べ散らかすというepisodeを繰り返します.カロリーの高い炭水化物やスナック菓子などを食べるのが典型例です.そのため朝になると「食べた記憶のないポテトチップスの袋が空いている」や「ベッドの中に記憶のない食べ物が持ち込まれている(食べかすが散らかっている)」といった経験をします.不完全な脳の覚醒状態であるため,前頭葉の「抑制」が外れることで,高カロリーの食品が選択される傾向があるのです.原因としては特発性もありますが,睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害,レストレスレッグス症候群などの病態が併存することもあります.また睡眠薬や抗精神病薬など,薬剤誘発性にSREDが生じることもあり,特に睡眠薬の中ではゾルピデムでリスクが高いとされます11).夜間の過剰摂食という鑑別ではSRED以外にも夜間摂食症候群(night-eating syndrome:NES)があります12).ただし両者の鑑別はむずかしいものではありません.まずNESはSREDと異なり健忘や意識障害を伴いません.NESでは夕食から寝る前の時間帯で(あるいは就寝中から完全に目覚めた状態で),強い摂食欲求にかられて摂食行動をとるものをさします.さらにNESは適切な食品を適切な方法で摂取します.前述のように,対して,SREDでは覚醒が十分ではないので,台所用品など時に有害な物質を摂取してしまうことすらあります.そのためSREDを疑ったときは,ポットのお湯や台所用品,調味料など摂取しては危険なものを不用意に置かないといった安全対策も大事です.睡眠関連摂食障害(SRED)

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