2633関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂
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A. RA患者の治療目標は最善のケアであり,患者とリウマチ医の協働的意思決定に基づかねばならない.B. 治療方針は,疾患活動性や安全性とその他の患者因子(合併病態,関節破壊の進行など)に基づいて決定する.C. リウマチ医はRA患者の医学的問題にまず対応第3章1RAの疾患活動性の低下および関節破壊の進行抑制を介して,長期予後の改善,特にQOLの最大化と生命予後の改善を目指す.RA診療は過去20年間で飛躍的に進歩した.現在の薬物治療はRAの病態を改善することにより臨床症状を改善させ,関節破壊の進行を防止するものであり,RAの病因を標的にした治療法や,発症リスクの高い個体に対する発症予防策はいまだ開発途上にある.これらの状況,2014年版診療ガイドラインの治療目標およびわが国のリウマチ対策の全体目標をふまえて,2020年版診療ガイドラインと同様に本診療ガイドラインにおけるRAの治療目標を以下のように定める.治療目標すべき専門医である.治療原則D. RAは多様であるため,患者は作用機序が異なる複数の薬剤を必要とする.生涯を通じていくつもの治療を順番に必要とするかもしれない.E. RA患者の個人的,医療的,社会的な費用負担が大きいことを,治療にあたるリウマチ医は考慮すべきである.る個々の治療推奨の基盤となる治療原則が必要である.RAの治療原則は,EULARやACRのリコメンデーションにも記載されており,これらは国・地域を越えて共通の原則と考えられる.したがって,本診療ガイドラインでは,2014年版・2020年版診療ガイドラインと同様に,最新のEULARリコメンデーション2019改訂版の治療原則を採用することとした.薬物治療のアルゴリズムは,T2Tの治療概念である“6か月以内に治療目標である「臨床的寛解もしくは低疾患活動性」が達成できない場合には,次のフェーズに進む”を原則にし,フェーズⅠからフェーズⅢまで順に治療を進める.また,RF/ACPA陽性(特に高力価陽性)や早期からの骨びらんを有する症例は関節破壊が進みやすいため,より積極的な治療を考慮し,1〜3か月ごとに疾患活動性を評価し,治療開始後3か月で改善がみられなければ治療を見直す.本診療ガイドラインにおける強い推奨(90〜100%が介入に同意する内容)は太い矢印,弱い推奨(60〜90%が介入に同意する内容)は細い矢印,エキスパートオピニオンは点線矢印で表した.この治療のアルゴリズムは,RAと診断された患者を対象にしている.RAと診断後は速やかに,フェーズⅠでまずMTXの使用を検討し(RA推奨1),すべてのフェーズにおいてMTXを基本的な薬剤として考慮すべきとした.ただし,わが国のRA患者は高齢者が多く,また海外と比較しLPDやILDの合併頻度が高く,禁忌事項のほかに,年齢,腎機能,肺合併症などを考慮して(RA推奨34,38,39,40),MTXの適応の有無と開始量を判断する.MTXの副作用の予防目的では葉酸の使用が163)薬物治療のアルゴリズム「関節リウマチ診療ガイドライン」では,患者とリウマチ専門医の協働的意思決定に基づく治療選択を行い,T2Tの概念のもと速やかに臨床的寛解をめざし,その寛解を維持し薬物の減量も検討することが示されている.これらを背景に2020年版診療ガイドラインでは,GRADE法に基づきリウマチ専門医と患者代表が作成した推奨から,医療経済面も考慮しながら薬物治療のアルゴリズムを作成した(図1).2024年版診療ガイドラインでも引き続きこのアルゴリズムを採用する.2024NEW1)治療目標RAは関節炎を主徴とする慢性炎症性疾患であり,肺・神経・血管などの関節以外の臓器にも病変が波及しうる全身性疾患でもある.関節炎が遷延すれば関節破壊が進行し,より重症な身体機能障害とQOLの低下をきたす.さらに病状が進行すれば,関節外病変の出現・進行,感染症,心血管病変の合併などによって,生命予後にも影響が及ぶ.2)治療原則RA患者の治療を行う際には,本診療ガイドラインで提唱すクリニカルクエスチョンと推奨治療方針

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