本CQにおける重大なアウトカムとして,治療開始24週時のDAS28寛解達成割合,ACR50達成割合,HAQの変化量,重篤な有害事象,および治療開始52週時のmTSSの変化量を取り上げた.第3章クリニカルクエスチョンと推奨csDMARDで効果不十分で中等度以上の疾患活動性を有するRA患者に,csDMARDとRTX併用は有効性が期待できる.ただし,国内でRAにおける重篤な感染症を含む安全性が確立されていないことに注意が必要である.他の疾患においてRTXによる重篤な有害事象が報告されているため,リスクとベネフィットを勘案し慎重に適応を判断すべきである.MTXを含むcsDMARDが使えないまたは効果不十分で中等度以上の疾患活動性を有するRA患者にRTX単剤投与は現時点では保険適用外であるが,海外ではおもに既存のbDMARDで効果不十分な例に使用され,ACRのガイドラインではLPDの既往のある患者には条件付きで推奨されている.保険適用外使用を考慮する場合には,LPDの既往のある患者や作用機序の異なる複数のDMARDに不耐または効果不十分な患者などに限定して検討することが望ましい.サマリー注 記日本でRTXはRAに対し保険適用外であるが,世界的にはRAに対し広く用いられている.ACRのガイドライン(参考文献2)では,悪性リンパ腫治療後のRA患者にRTX治療が条件付きで推奨されている.悪性リンパ腫,LPDの既往を有するRA患者数はわが国でも増加しており,今後のRA治療の選択肢を増やすうえでこの問題は重要である.現在,日本でもRAに対するRTXの臨床試験(治験)が行われているが,総合的な有用性はこれまで検討されていない.2)エビデンスの要約RAに対するRTXを対象として評価した.1900年1月1日から2022年6月30日までの期間を設定し,PubMed,Cochrane Central Register of Controlled Trials,Embase,医学中央雑誌で報告されたRA患者におけるRTXに関する論文を系統的にレビューし,重複を除いた4,408論文が抽出された.これらのうち87論文について詳細な検討を行い,本CQに関連する5件のRCTから22論文が同定された.RTXバイオ後続品投与例ないしbDMARDに不耐または効果不十分の症例を対象とした研究は評価対象外とした.アウトカム評価は5件の試験から22論文を質的統合に,5件の試験を量的統合に組み入れて行った.4件がMTX併用試験,1件がLEF併用試験であった.csDMARDと比較した,RTXとcsDMARD併用の望ましい効果は,24週時のDAS28寛解達成の絶対効果が1,000人あたり109人増加,95%CI[40,226],相対効果がRR=3.04,95%CI[1.76,5.24],ACR50達成の絶対効果が1,000人あたり180人増加,95%CI[106,280],相対効果がRR=2.57,95%CI[1.92,3.44],HAQ変化量の絶対効果はMD=−0.15,95%CI[−0.31,0.01],52週時のmTSS変化の絶対効果はMD=−1.08,95%CI[−1.69,−0.47]で,望ましい効果は「中」と判断した.csDMARDと比較した,RTXとcsDMARD併用の24週時の望ましくない効果は,重篤な有害事象が絶対効果として1,000人あたり21人増加,95%CI[−7,64],相対効果としてRR=推奨の強さ 弱い エビデンスの確実性 非常に低 パネルメンバーの同意度 7.75csDMARDで効果不十分で中等度以上の疾患活動性を有するRA患者に,RTXの併用は有用か?MTXを含むcsDMARDで効果不十分で中等度以上の疾患活動性を有するRA患者に,RTX併用を推奨する(条件付き).ただし,保険適用外使用を考慮する際には,現在臨床試験中であり,国内のエビデンスが不足していること,患者背景などを十分勘案する.RA CQ19661)推奨の背景RAの現在の標準治療は,まずcsDMARD(MTXまたはその他のcsDMARD)で治療を開始し,効果不十分な場合に追加治療を検討する(参考文献1).csDMARDで効果不十分なRA患者に対して,国際的には抗CD20モノクローナル抗体製剤RTXの追加併用は選択肢の1つとなる.効果や副作用・コストの観点からその有用性を明らかにすることは重要である.RTX 12024NEWRA 推奨19推奨文
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