2633関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂
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2.クリニカルクエスチョンと推奨1.35,95%CI[0.88,2.07]で,望ましくない効果は「中」と判断した.3)エビデンスの確実性本推奨作成に用いたエビデンスについては,いずれもRCTにDAS28寛解達成割合については,「バイアスのリスク」「非一貫性」「非直接性」「その他の検討」では深刻な問題は認められなかったが,総サンプル数および総イベント数が小さいため「不精確さ」は深刻と判断し,エビデンスの確実性は「中」と評価した.ACR50達成割合については,「非一貫性」「非直接性」「その他の検討」では深刻な問題は認められなかったが,アウトカム評価者の盲検化が不十分かつ結果に影響する多くの欠測値のため「バイアスのリスク」は深刻と判断,また,総サンプル数および総イベント数が小さいため「不精確さ」は深刻と判断し,エビデンスの確実性は「低」と評価した.HAQの変化量については,「バイアスのリスク」「非一貫性」「非直接性」「その他の検討」では深刻な問題は認められなかったが,平均差の95%CIにMIDが含まれるため「不精確さ」は深刻と判断し,エビデンスの確実性は「中」と評価した.mTSSの変化量については,「バイアスのリスク」「非一貫性」「非直接性」「その他の検討」では深刻な問題は認められず,平均差の95%CIにMIDが含まれなかったが,総サンプル数が小さいため「不精確さ」は深刻と判断し,エビデンスの確実性は「中」と評価した.RTXとMTX/csDMARDの併用開始24週時の疾患活動性改善効果は,DAS28寛解達成のNNTが9.2,ACR50達成のNNTが5.6であった.HAQ変化量に関してはMD=−0.15,95%CI[−0.31,0.01]であった.RTXとMTX/csDMARDの併用開始52週時のmTSS変化量に基づいている.重篤な有害事象に関しては,「非一貫性」「非直接性」「その他の検討」では深刻な問題は認められなかったが,結果に影響する多数のアウトカムデータ欠損があり「バイアスのリスク」は深刻と判断,また,RRの95%CIが「相当な利益」または「相当な害」とみなされる基準の0.75と1.25の双方を含んでおり,「不精確さ」は非常に深刻と判断し,エビデンスの確実性は「非常に低」と評価した.重大なアウトカムにおける介入の効果は患者にとって異なる方向となるため,重大なアウトカムの中でエビデンスの確実性の最も低い「非常に低」とした.4)推奨の強さ決定の理由① 利益と害のバランスの評価関してはMD=−1.08,95%CI[−1.69,−0.47]であった.一方,有害事象に関しては,RCTにおいては,24週時までのRTXとMTX/csDMARDの併用投与はMTX/csDMARDと比べて,重篤な有害事象のNNHが47.6であった.現在,わが国では臨床試験(治験)中で保険適用外のため,ここに該当する見解は得られていないが,一般的な患者は,関節炎改善と重篤な有害事象の両者に価値をおくと考えられ,本診療ガイドラインでは,リウマチ専門医の投票によって意思決定に重大と判断されたアウトカムを選択しており,アウトカムに対する価値観の重要性に関するばらつきは少ないものと考えられる. RAに対してRTXが使用可能になれば治療の選択肢が増え,特にLPDの既往があるRA患者にとっては,重要な選択肢となりうるため,受け入れられるであろう.③ コストい.日本でRTXはRAに対し保険適用外である.参考までに他の適応症に対する薬価は,リツキサン®点滴静注100mgが21,609.00円/瓶,リツキサン®点滴静注500mgが105,563.00円/瓶である(2023年4月現在).パネル会議においては,RTXはわが国ではRAに対して臨床試験(治験)中で保険適用外であり,単に「使用を推奨する」との表現は強すぎるのではないか,との意見が出された.以上を総合的に判断して,「保険適用外使用を考慮する際には,現在臨床試験中であり国内のエビデンスが不足していること,患者背景などを十分勘案する」とただし書きを推奨文に加えることとした.また,本ガイドラインの対象とする薬剤の範囲を保険適用にかかわらず検討した旨をガイドライン中に明記することとした.5)採用論文リスト 1) Behrens F, et al:Rheumatology(Oxford)2021;60:5318-RTX使用にあたっては,重篤な有害事象に留意が必要であるが,総合的にRTXとMTX/csDMARDの併用投与による望ましくない効果が望ましい効果を上回ることはないと考えられる.② 患者の価値観・意向QALYなど費用対効果に対する日本の論文,エビデンスはなbDMARDは高額であり,患者の経済的負担と国民医療費の増大を招くため,コストベネフィットを考慮して使用する必要があるが,特にLPDの既往のあるRA患者で十分な治療効果が得られる場合には,薬剤費以外の直接費用の減少や労働生産性の向上も期待される.④ パネル会議での意見5328. 2) Edwards JCW, et al:N Engl J Med 2004;350:2572-2581. 3) Emery P, et al:Arthritis Rheum 2006;54:1390-1400. 4) Peterfy C, et al:Ann Rheum Dis 2016;75:170-177. 5) Emery P, et al:Ann Rheum Dis 2010;69:1629-1635.67

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