第4章多様な患者背景に対応するためにJIA少関節炎型・多関節炎型の患者(児)に対するcsDMARDとして,LEF,AZA,SASPに関する論文が抽出された.LEF投与は,16週における評価でMTX投与と比較しておそらく劣っている.AZAやSASPはMTXとの直接比較として有用なデータがないため検証できていないが,リサーチエビデンスを参考に総合的に判断して,利益と害のバランスにおいて,AZA,SASP,LEF投与がMTX投与を大きく上回ることはないと考えられる.小児におけるLEFの安全性データは乏しく,わが国ではAZA,SASP,LEFはJIAに保険適用外である.MTXあるいはbDMARDが使用可能な患者では,これらの薬剤を投与しないことを条件付きで推奨する.わが国でJIA少関節炎型・多関節炎型の患者(児)に対するcsDMARDは,MTXのみが保険適用があり,TACは「55年通知」で「難治性・既存治療で効果不十分なJIA」に対する適応外使用の保険適用が認められている.TACについてはMTXを含めて治療効果を直接比較した論文がなく,今回の推奨対象には含まれていない.サマリー注 記Cochrane reviewはなく,PubMed,医学中央雑誌の検索で抽出された6件のうち,RCTである1件が抽出された.採用論文はAZAとプラセボの比較試験であり,AZAにおける重大なアウトカムとして,可動域制限を有する関節数の変化量と薬剤継続率が評価対象候補となったが,対象症例数が少なく,関節評価Cochrane reviewは1件あり,PubMed,医学中央雑誌の検索で抽出された3件のうち,RCTである1件が抽出された.採択論文はLEFとMTXの比較試験であり,LEFにおける重大なアウトカムとして,活動性関節数の変化量,ACR Pedi 30達成割合,可動域制限を有する関節数の変化量と薬剤継続率,重篤な有害事象,重篤な感染症を評価した(採用論文2).MTXと比較した,16週時のLEFの望ましい効果は,活動性関節数の変化量の絶対効果がMD=0.8,95%CI[0.4,1.2],ACR Pedi 30達成の絶対効果は1,000人あたり214人減少,95%CI[−349,−45],相対効果はRR=0.76,95%CI[0.61,0.95],可動域制限を有する関節数の変化量の絶対効果はMD=0.1,95%CI[−0.22,0.42],薬剤継続率の絶対効果は1,000人あたり39人減少,95%CI[−117,39],相対効果はRR=0.96,95%CI[0.88,1.04]であった.望ましくない効果は,重篤な有害事象の絶対効果として1,000人あたり0人と不変(MTX群の発現率を外挿した場合推奨の強さ 弱い エビデンスの確実性 非常に低 パネルメンバーの同意度 7.88が中央値のみの記載であったため,薬剤継続率のみでの評価とした(採用論文1).プラセボ群と比較した,16週時のAZA群の望ましい効果として,薬剤継続率の絶対効果は1,000人あたり132人増加,95%CI[−557,1,000],相対効果はRR=1.18,95%CI[0.24,5.86]であった.望ましくない効果は判定不能とした.② LEFJIA少関節炎型・多関節炎型の患者(児)に,MTX以外のcsDMARDは有用か?JIA少関節炎型・多関節炎型の患者(児)に,AZA,SASP,LEFを投与しないことを推奨する(条件付き).JIA CQ2252JIA少関節炎型・多関節炎型 22024NEW1)推奨の背景活動性のJIA少関節炎型・多関節炎型(RF陽性または陰性)の患者(児)に対する標準的第一選択薬はMTXである.しかし,禁忌や不耐のためMTXを使用できない場合には,MTX以外のcsDMARDを使用する機会がある.また,わが国では海外で用いられない固有のcsDMARDが使用されている.これらの有用性を検討することは重要である.2)エビデンスの要約MTX以外のcsDMARD 8剤(SASP,BUC,TAC,IGU,LEF,MZR,AZA,CsA)について,2022年12月31日までの期間においてPubMed,Cochrane Central Register of Controlled Trials,医学中央雑誌で,2020年12月31日までの期間においてEmbaseで報告された論文のSRを行った.このうち,エビデンス評価まで行えた薬剤はAZA,LEF,SASPの3剤のみであった.① AZAJIA 推奨2推奨文
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