2633関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂
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やSASPとMTXとの比較については有用なデータがないため検証できていない.また,わが国でRAに保険適用があり,JIA少関節炎型・多関節炎型の患者(児)に対しても臨床的に用いられているTACは,RCTデータがないため,本CQにおいてエビデンス評価ができなかったが,有効性を示す報告(参考文献1,2)もあり,今後の検証が望まれる.② 患者の価値観・意向は1,000人あたり32人増加,95%CI[−14,1,000]),相対効果としてRR=7.00,95%CI[0.37,131.89]であった.重篤な感染症の絶対効果として1,000人あたり0人と不変,95%CI[0,0],相対効果としてRR=3.00,95%CI[0.13,71.82]であった.③ SASP6.小児および移行期・成人期の若年性特発性関節炎マネジメント ―2.クリニカルクエスチョンと推奨基づいている.QALYなど費用対効果に対する日本の論文,エビデンスはない.MTXはJIA少関節炎型・多関節炎型に対し国内で承認されている唯一のcsDMARDであり,2mg先発医薬品の薬価は149.30円/カプセル,後発医薬品では42.20〜97.40円/カプセル・錠(2023年8月現在),LEFは10mg錠108.00円,20mg錠185.40円,AZAは50mg錠88.20円,SASPは500mg錠11.20円,TAC 1mgカプセルは先発医薬品453.20円,後発医薬品114.40円である.患者(児)1人にかかるコスト(52週計算)としては,平均体表面積が1.0m2,体重35kg前後となる10歳で10mg/m2=10mgを週1回の投与で,MTX 10,972.00〜38,818.00円,LEF(維持量10mg/日として)39,312.00円,AZA(2.5mg/kg/日として)64,209.60円,SASP(30〜50mg/kg/日として)4,076.80円,TAC(0.1mg/kg/日として)166,566.40〜659,859.20円である.Cochrane reviewは1件あり,PubMed,医学中央雑誌の検索で抽出された19件のうち,RCTである1件が抽出された.採用論文はSASPとプラセボの比較試験であり,SASPにおける重大なアウトカムとして,活動性関節数の変化量,可動域制限を有する関節数の変化量と重篤な有害事象が評価対象候補となった(採用論文3).プラセボと比較した,24週時のSASPの望ましい効果は,活動性関節数の変化量の絶対効果がMD=−4.76,95%CI[−8.06,−1.04],可動域制限を有する関節数の変化量の絶対効果はMD=−0.52,95%CI[−3.22,2.18]であった.望ましくない効果は,重篤な有害事象の絶対効果として1,000人あたり61人増加,95%CI[−28,1,000],相対効果としてRR=2.92,95%CI[0.12,69.20]であった.④ TACCochrane reviewはなく,PubMed,医学中央雑誌の検索で抽出された2件(参考文献1,2)のうち,RCTは抽出されなかった.後述するが,TACは社会保険診療報酬支払基金によってJIA少関節炎型・多関節炎型に対しての適応外使用が通知されたcsDMARDであるため,今後のエビデンス蓄積が望まれる薬剤として,ここに記載する.3)エビデンスの確実性本推奨作成に用いたエビデンスについては,いずれもRCTにMTX以外のcsDMARDのエビデンスの確実性については,採用された論文は現在の標準的アウトカムを用いた評価に乏しく,重大なアウトカムについて全般にわたるエビデンスの確実性をGRADE法によって評価することは困難であったが,論文の質,評価されたアウトカムの種類,RRの点推定値の方向性とばらつきなどから,AZA,LEF,SASPのいずれも「非常に低」と判断された.これらの結果と採用論文が限られていることを総合的に判断し,MTX以外のcsDMARD全体にわたる全般的なエビデンスの確実性を「非常に低」とした.4)推奨の強さ決定の理由① 利益と害のバランスの評価MTX以外のcsDMARDは,重大なアウトカムに関するエビデンスの確実性は高くないものの,エビデンスプロファイルから,望ましい効果と望ましくない効果のバランスはLEFとMTXの比較ではおそらくMTXが優れていると考えるが,AZAこれまでわが国におけるJIA少関節炎型・多関節炎型の治療に関する大規模な意向調査は報告されていないが,疼痛改善を含む疾患活動性の改善は望ましい治療効果であり,副作用や感染症が望ましくない効果であることに関するばらつきはおそらくないものと考える.今後,日本小児リウマチ学会または患者会において患者の価値観における調査を行うことが望ましい.③ コスト小児慢性特定疾病医療費助成制度または指定難病医療給付制度の対象となれば,一般所得家庭でそれぞれMTX 2,194.40〜7,763.60円/年,LEF 7,862.40円/年,AZA 12,841.20円/年,SASP 815.36円/年,TAC 33,313.28〜131,971.84円の負担であり,おおむね軽微な増加または減少と考えられる.④ パネル会議での意見パネル会議においては,JIA少関節炎型・多関節炎型の患者(児)に対する,MTX以外のcsDMARDとMTXとの有効性や安全性を直接比較するデータが乏しいことから,LEF以外のcsDMARDについて明確なエビデンスを提示することはできなかった.また,小児におけるLEFの安全性データが乏しいことも指摘された.症例数が少ないJIA少関節炎型・多関節炎型においてはGRADE法の限界があるとの認識も示された.リサーチエビデンスを参考に総合的に判断して,利益と害のバランスにおいて,AZA,SASP,LEF投与がMTX投与を大きく上回ることはないと考えられ,わが国では保険適用外であることも勘案し,これらの製剤を投与しないことを条件付きで推奨するとした.今回のSRにおいて,まとまったRCTがないため検証さ253

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