2641小児の咳嗽診療ガイドライン2025
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12345 第 3 章 咳嗽の診断53 特徴的な咳嗽(p.37の表3-2を参照)は診断に有用であり,また詳細な問診(p.36参照)あるいは身体所見(p.38参照)から原因疾患の診断に至ることは少なくない. 咳嗽が長引いたり重症な場合は,原因として疑わしい疾患を明らかにしたり病状を確認するため,さまざまな検査が実施される(他項参照).一部感染症では迅速診断が有用である.咳嗽の原因疾患をスクリーニングするという観点からは,胸部ならびに副鼻腔の画像検査(p.46参照)と呼吸生理学的検査(p.44参照)が有用である.感染症やアレルギー疾患などを疑う場合には血液検査(p.40参照)が必要になる. 診断が確定すれば原因疾患に有効と考えられる特異的な治療を行うが,検査が十分に実施できない場合や確定診断に至らない場合には,やむを得ず治療を優先し,その治療に対する反応性から原因疾患を推定せざるを得ない. しかし,治療開始により症状が改善したからといって有効とは判断できず,単に自然経過をみているにすぎない場合もあり,判定には慎重な姿勢が求められる.また,有効性が乏しい場①急性咳嗽の多くはウイルス感染に伴う急性鼻咽頭炎(かぜ症候群)であり,特異的な治療法はなく経過とともに消失する.②救急対応を必要とする疾患や慢性咳嗽の原因となる基礎疾患を有する例が含まれる可能性も考慮してていねいな問診,診察を行い,疑わしいときは検査を実施して鑑別を行う.③咳嗽に対する患児・保護者の不安は強いので,安易に薬剤投与を行うだけでなく納得のいく適切な説明を行う必要がある. 急性咳嗽とは3週未満で改善する咳嗽をいうが,咳嗽を主訴に受診した患者に対しては,咳嗽をきたすすべての原因疾患を念頭において鑑別を行う必要がある(図3-14). 救急対応を必要とする疾患〔呼吸困難や低酸素血症を認める場合,突然の発症で急激な進行による悪化が予想される場合などは「救急医療の必要な咳嗽フローチャート」(p.59)参照〕や,基礎疾患に伴う慢性咳嗽の初期症状で受診する場合〔対応は「慢性咳嗽のフローチャート」(p.57)参照〕もまれではない. 急性ウイルス性上気道感染に伴う咳嗽が圧倒的多数を占めるため,全身状態はおおむね良好で,咳嗽以外の症状として,発熱や鼻汁,咽頭痛などの感冒症状や軽度の食欲低下,全身倦怠感などの非特異的症状を訴える.急性鼻咽頭炎に有効な治療法はなく経過観察のみでよいが,時に下気道感染症に進行したり,細菌性二次感染を合併したりすることがあるので,湿性咳嗽の遷延化や発熱の持続,食欲低下などの症状がみられる場合には再受診するように指導しておく.咳嗽を主訴に受診する患者に対する基本的チェック急性咳嗽の原因は急性鼻咽頭炎(かぜ症候群)がほとんどである問診や診察により特異的な原因疾患が疑われる場合がある検査が必要となる場合診断的治療としての薬物療法E.確定診断の進め方-経過が3週未満の咳嗽-Keypoint第3章 咳嗽の診断1 急性咳嗽のフローチャート

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