2641小児の咳嗽診療ガイドライン2025
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K+H+H2ブロッカーアセチルコリンヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の有用性が期待できる.86図4-3  ヒスタミンH2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害薬の薬理作用活性体阻害プロトンポンプ(H+,K+-ATPase)胃酸胃壁細胞ムスカリン受容体PPI迷走神経ヒスタミンH2受容体cAMPCa2+ECL細胞阻害(水野成人.抗潰瘍薬.臨床研修プラクティス2009;6:68-72より一部改変)(ECL)細胞が産生するヒスタミンに対し,H2ブロッカーはH2受容体に可逆的に結合することで,またPPIはプロトンポンプの働きを阻害することで胃酸分泌抑制作用を示す(図4-3)1). 小児の呼吸器疾患に対するH2ブロッカー,PPIの効果については,まだ不明な点が多いのが現状である.吸入ステロイド薬などを用いてもコントロールに難渋する喘息児や慢性咳嗽を呈する児でGERDの関与が疑われる場合には,有用性が期待できる2).PPIについては,これまで至適投与量などについてのエビデンスが少なく,剤型もカプセル,OD錠のみであったが,2018年にエソメプラゾール(ネキシウム®)が1歳以上の小児の逆流性食道炎に対して承認を取得した. 現在小児に対して承認されている薬剤はロキサチジン(アルタット®),エソメプラゾール(ネキシウム®)である.1.ヒスタミンH2受容体拮抗薬3) 表4-15を参照のこと. H2ブロッカーは受容体拮抗薬であり,耐性が出現しやすいため本来は長期投与には向かないとされる.都度症状の確認・再評価を行いながら投与期間や追加治療も考慮する.2.プロトンポンプ阻害薬3) 表4-16を参照のこと.①慢性咳嗽の原因として,胃食道逆流症(GERD)の関与が注目されている.②コントロールに難渋する慢性咳嗽を呈する児でGERDの関与が疑われる場合には,ヒスタミン③小児においては,PPIは至適投与量や投与期間など十分なエビデンスが得られていなかったが,2018年エソメプラゾール(ネキシウム®)が逆流性食道炎の小児適応を取得し治療の選択肢が増えたため,今後の検討が期待される. 通常の胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD)と異なり,呼吸器症状を呈する場合には薬物治療が優先され,ヒスタミンH2受容体拮抗薬(以下,H2ブロッカー)とプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)による制酸治療が行われる. 胃粘膜壁細胞には酸分泌刺激の受容体として,H2受容体やムスカリン受容体などがある.壁細胞内で生じる一連の胃酸分泌反応の最終過程で壁細胞内からH+を放出し,代わりにK+を取り込むプロトンポンプ(H+,K+-ATPase)が働いている.胃壁のenterochromaffin cell-likeCQ‒6参照薬理作用と適応投与方法B.薬物による治療Keypoint第4章 咳嗽の治療8 ヒスタミンH2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害薬

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