130図5-9 三脚位喉頭蓋腫脹,体幹前傾,顎前突,流涎. 上気道の炎症性閉塞のため,多呼吸および吸気性喘鳴が認められる.胸骨上,鎖骨上および肋骨下の吸気時陥没にも注意が必要である. 強い咽頭痛および吸気性喘鳴が聴かれる患者で疑われる.吸気性喘鳴は急性喉頭蓋炎のほか,ウイルス性クループや気道異物でも生じる.ウイルス性クループとの鑑別を表5-9に示す. 本症が疑われる場合,通常の小児科診療で実施される舌圧子による咽頭所見の確認は,突然の上気道の閉塞をひきおこす恐れがあるため禁忌である. 入院し,気管挿管の準備をしたうえで軟性ファイバースコープによる喉頭鏡検査を行うことも有用である(図5-10).浮腫で腫大し,チェリーレッド色を呈する喉頭蓋が確認できれば確定できる3).①炎症で腫大した喉頭蓋によって突然の気道閉塞をきたす疾患で,迅速な対応が必要である.②ワクチンで予防できる疾患の一つで,生後2か月からのインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン接種で,国内外で報告が激減している. 急性喉頭蓋炎は,喉頭蓋および周囲組織におこる重症細菌感染症である.突然,気道閉塞をおこし死亡することもある. 国内ではインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b:Hib)ワクチンが2013年4月から定期接種となり,ほとんど認められなくなった1). 2013年4月の感染症法改正に伴い,侵襲性インフルエンザ菌感染症は全数届出が求められている(急性喉頭蓋炎は求められていない). Hibがおもな起炎菌.時に,b型以外の莢膜をもつH. influenzaeでも発症する. 鼻咽頭に定着したHibが声門上蜂巣炎をひきおこし,血行性に散布されることもある.喉頭蓋周囲組織が炎症性に著明に腫大して気道を閉塞する可能性があり,注意深い観察が必要である. 咽頭痛,嚥下痛や嚥下障害,発熱などで突然発症する.流涎,顔色不良などから急激に進行し,数時間以内に窒息をきたすことがある. 患児は換気を増やすため,背を真っすぐに前傾して座り,開口状態で下顎を前突させ,頸部を過伸展した三脚位とよばれる姿勢をとる(図5-9)2).ただし,三脚位は扁桃周囲膿瘍または咽後膿瘍などの他の上気道障害でも出現することがある.疾患概要病 態咳嗽の特徴検 査B.感染症Keypoint第5章 おもな疾患7 急性喉頭蓋炎
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