2654新生児感染症マニュアル
2/10

2感染症診療のキホンChapter1感染症診療の基本とは,問診や身体診察,検査などによって可及的に感染巣と病原体を明らかにし,その病態・病原体に特異的な治療を施すことである.その基本は,老若男女問わず変わらないものである.にもかかわらず,「新生児」に特化する理由は何なのだろうか.他年齢と比べて,新生児の感染症はその疫学や感染成立機序などが大きく異なる.そのため,新生児感染症の基本を理解するということは,その違いやその原因に対する十分な知識を得るということである.本稿では,新生児の感染症を診療するために必要な知識について概略を論じる.新生児は感染症に対して非常に弱い存在である.ここ20~30年の間に全体的な死亡率は低下したとはいえ,世界では年間250万人の新生児が死亡し,そのほとんど(99%)が,とくにアフリカ,中東,南アジア,東南アジア諸国などの低・中所得国で起きている1).そして,その死亡の3割弱が,重症新生児感染症による.より新生児死亡率が高い状況においては,全新生児死亡の40%が感染症による1).このような死亡は,妊娠前・中,分娩中,および出生直後における予防・治療的介入によって大幅に減少させることができる.NICUに入院した極低出生体重児(very low birth weight infant:VLBWI;出生体重1,500 g未満),超低出生体重児(extremely low birth weight infant:ELBWI;出生体重1,000 g未満)は,気管挿管,血管カテーテル,尿道カテーテルなど諸々のデバイスが挿入されていることが多く,基本的に医療関連感染症(healthcare associated infections:HAIs)の危険性が非常に高い.日本の小児専門医療施設,周産期医療センターに対して行った,2015年に出生したELBWIの死亡率や合併症罹患率を調査したアンケート研究01感染症診療のキホン02新生児感染症の疫学

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る