3感染症を疑う新生児に対する診療の進め方1によると,死亡原因の21.3%が感染症であった2).このことからも,NICU入院中のHAIsの診療を適切に行うことの重要性が高いことがわかる.新生児の感染症を考えるうえで,彼らの免疫機能がいまだ発展途上にあり,とくに早期産では,その傾向がより顕著になることを知っておく必要がある.「免疫学的特徴を知る」(☞p.17)で詳述されているので,本稿では簡単に述べる. 液性免疫免疫ブロブリンG(IgG)は第三妊娠期(28週以降)に,母体から経胎盤的に盛んに移行される.出生時の血清IgGは母体と同レベルだが,IgGの半減期はおよそ3~4週間であり,児のIgG産生能が未確立な出生3~4か月がもっとも低くなる.早産児では移行抗体が十分でなく,IgG産生能自体も低いため,低ガンマグロブリン血症になりやすい.その他,IgA,IgM,IgD,IgEなどは経胎盤移行しない. 細胞性免疫細胞性免疫は母体からの移行はない.胎児期は自然流産を誘発しないよう,CD4+(Th1)T細胞の働きが弱くなっている.新生児期にはまだその働きが成熟していないため,インターフェロンγの産生が低下しており,マクロファージや単球の働きが十分でない.これが単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)感染症に対する易感染性および重症化の要因と考えられている. 好中球数・機能新生児や低出生体重児では骨髄のプールが少なく,感染症発症時に十分な好中球の動員ができない.白血球低下は細菌感染症の予後不良因子である.また数だけでなく,接着能や遊走能,貪食能など全般的に,成人に比べて低下している. バリア機能新生児,とくに早産児にとって,皮膚や粘膜の物理的および化学的なバリア機能の未熟性は重要な易感染性の要因となる.新生児の皮膚は脂質含有量が低く,酸性pHでないため抗菌作用が弱い.通常2~4週で成熟する.また腸管粘膜では,新生児が成人と同様の常在細菌叢を得るまでに1年かかり,出生直後は母体由来,以降はさまざまな環境要因(抗菌薬曝露,耐性菌伝播など)に左右され,病原性のある細菌が定着しやすい.常在細菌叢の破綻は壊死性腸炎のリスクとな03新生児の免疫機能abcd
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