2654新生児感染症マニュアル
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50受けやすく,局所投与された薬の影響は成人より大きいことが予想される.また骨格筋の血流量が少なく筋収縮が不十分なため,筋肉内投与の吸収率が低下するかもしれないが,筋肉内毛細血管密度は高いため,埋め合わされる可能性もある.局所効果をねらっての経気道投与も多く行われているが,ステロイド吸入によりコルチゾールの抑制が起こることが示されており,全身曝露も起こりうる.しかし,投与に用いられるデバイスによっては予定量が投与されないことも示されており,注意が必要である. 分布年齢による体の構造変化は,薬物が分布する物理学的スペースにも影響する.新生児の総水分量は体重あたり80%と,成人(60%)に比べて多く,とくに細胞外液は成人の約2倍の45%を占めており,体重あたり同じ投与量でも血中濃度は上がりにくい(見かけ上の分布容積が大きい).しかし,酸性の薬物はアルブミンと,アルカリ性の薬物はα1-酸性糖蛋白と結合するが,新生児ではその蛋白濃度が低いため,薬効ともっとも関係する遊離薬物濃度が高値となる.たとえばフェニトインなどは蛋白結合率が高いため,アルブミンが低値であると総血中濃度が低くても遊離薬物濃度が高く,効b新生児80%35%45%36% 9%乳児75%30%45%37% 8%幼児 60% 30% 30%22.5% 7.5%成人60%40%20%15% 5%①全体液 ②細胞内液 ③細胞外液  ④組織液  ⑤血液・リンパ液吸収分布血中濃度mg/L代謝新生児期には代謝酵素は低い新生児の腎排泄能は成人の20%程度排泄②③④⑤①図1 吸収・分布・代謝・排泄薬物の蛋白結合率が高いほど血中にとどまりやすく,低いと全体液に分布する.

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