2656リハビリテーション管理学
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 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のセラピスト3職種はリハビリテーション専門職であり,それぞれ患者(対象者)の社会復帰を支援する.セラピストがその役割を果たすためには,個人レベルの知識や技術の向上はもちろん,リハビリテーションサービスという点からは接遇や安全管理も求められる.また,リハビリテーションを組織という枠組みで考えると,労務管理や物品管理,収益管理など,リハビリテーション業務を管理運営(マネジメント)するという発想や,それを行うマネージャー(管理者)が必要であることは言うまでもない.起業をして会社の代表として活躍するセラピストは,会社の最高責任者として労務管理などのマネジメントを行い事業をすることとなるが,被雇用者よりマネジメント能力が求められる. さて,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則には2020年より,言語聴覚士学校養成所指定規則には2025年より「管理学」が含まれるようになり,法制度の理解や職場管理・教育に必要な能力,職業倫理を遵守する態度を養うこととなった. マネージャーの守備範囲は広く,マネジメント能力は一朝一夕に獲得し得るものではない.しかし,プレーヤーからマネージャーに変わる日は突然訪れることがある.社会に出る前に,またマネージャーになる前に管理学を体系的に学ぶことは,どのような組織に属しても,それぞれのセラピストが社会人としての基礎力を高め,所属する組織の労働生産性を向上させ,ひいては関係する人々の幸せづくりに貢献できるものと考える. 本書の執筆者の大半は,臨床現場で管理者を務めているセラピストである.そして,自身で起業し会社の代表取締役であるセラピストにも執筆いただいた.それぞれのこれまでの,または現時点でのマネージャーとしての対処方法や工夫,苦労など,自身の経験を踏まえた内容となっており,本書の特徴であると考えている.さらに,本書では,第8章で事業経営(財務管理,マーケティング)についても触れている.これは,これからのセラピストが組織経営のことも理解しながら業務に従事する世の中が当たり前になってほしいという,われわれの思いを込めている. 最後に,本書は「管理運営」という内容を,いかにして読者に読みやすいものにするのかを意識して出版社と意見を出し合いながら制作し,ついに発刊の日を迎えることができた.この場をお借りして,株式会社診断と治療社の西川弘美様,島田つかさ様,土橋幸代様に深謝申し上げる. 2024年8月 久保高明,山野克明iiiはじめに

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