『リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版』3)では,医療事故対策以外に,運動負荷を伴うリハビリテーションを実施する場合のめまいや意識障害などの合併症対策や,標準予防策などの医療関連感染対策について触れている.事故等を防ぐためには,セラピスト個人の資質の向上はもちろんではあるが,患者情報の申し送りなど情報共有に関するヒューマンエラーといった,その他の要因によっても事故が起こることがあるため,安全管理に関するセラピスト教育を行ったり,組織全体で日頃からエラーを未然に防ぐリスクマネジメントを実践したりすることも求められる.4第1章 リハビリテーションにおける管理運営とは?職場環境1)機器設備 リハビリテーション部門には常備すべき機器や消耗品が多いが,それらの管理も業務の一部である.たとえば,手洗い時に使用するペーパータオルや,ホットパック加温装置の水の補充などである.機器の故障による患者への重篤な被害を避けるため,機器の適宜の動作確認と,購入からの期間やメーカーのアフターサービスの有無も含めて機器を管理する必要がある. また,スタッフルームの整理整頓は,作業効率の向上ばかりでなく,望ましい就労環境を維持することにもつながる.2)人間関係・メンタルヘルス 厚生労働省による「令和4年 労働安全衛生調査の結果」において,2021年11月から2022年10月までの1年間でメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した,または退職した労働者がいた事業所は13.3%で,医療・福祉産業でみるとその割合は17.9%であった4). メンタルヘルス不調には職場の人間関係ストレス(上司・同僚など)が関係する5)ことが多い.人の幸せづくりを担うセラピストが自身の種々のストレスを低減することは,ひいてはリハビリテーションサービスを維持・向上させることにつながる.3)収益管理 医療の現場では,リハビリテーションサービスの対価である診療報酬(収入)が入ってくるが,病院の支出が収入を上回ることで,収入と支出のバランスが崩れ,いわゆる赤字の状態となる(第8章参照). リハビリテーション部門においては,それぞれのセラピストの診療報酬がどのくらいか,必要となる機器・消耗品の購入費用や維持
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