2657子どもの花粉症診療の極意
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舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)は,患者さんが自宅で治療を継続できるという利便性があり,皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)に比べて注射を伴わない点が患者さんにとっての大きな利点です.しかし,効果的に治療を行うためには,治療の導入時から維持期まで,医師による詳細な指導とフォローが不可欠です.本章では,SLIT の導入からフォローアップ,そしてドロップアウトの防止までの具体的な手順を説明します.導入でいかに説明するかが維持期でのアドヒアランスにかかわる大きな因子です.なぜならSLIT は自宅で簡単にできるだけに,簡単に自己中断してしまうからです.この治療はどんな治療で,どんな副作用が出ることがあって,この治療が効くことでその子どもにとってどんなイイコトがあるかを明確にイメージできてからはじめることが,その後の継続に大きなインパクトをもたらします.SLIT を処方するにあたっては,適応となる患者さんを慎重に選定する必要があります.問診でスギ花粉症を強く疑い,アレルゲン特異的 IgE 抗体検査や皮膚プリックテストによって,スギ花粉に対する陽性反応が確認された患者が適応です.喘息やアナフィラキシーの既往がある患者さんの場合,慎重な評価が必要です.スギ花粉が飛んでいるときに鼻症状や目症状があるか?外遊びをたくさんした後に症状がひどくなるか?家族にスギ花粉症がいるときに同じタイミングで症状が出ていたか?を確認することで,スギ花粉症らしさを確認します.鼻アレルギー以外のアレルギー疾患の有無を評価するため,鼻腔所見だけでなく,眼所見,皮膚所見,呼吸音は必ず確認します.アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis:AR)やアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD),気管支喘息を合併していて,コントロールが不十分なら,治療を見直してコントロールが良好になるようにもっていきます.これらの疾患のコントロールが不安定な状態で SLIT を導入すると,口や喉のイガイガや湿疹の悪化など,SLIT の副作用が出やすい印象があります.時に,SLIT を導入後に咳が出るようになったということで紹介受診され,88導入の手順患者選定導入前(表 6-1)❶問診❷診察Chapter 6 舌下免疫療法(SLIT)の導入と実践1舌下免疫療法(SLIT)導入の手順

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